慶秀大学海浜研究所 3

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 それぞれが自分の部屋で荷をほどき終わると、1階の実験室に集まった。  実験室のホワイトボードを縦に3つに区切り、それぞれの実験の概要を家永から説明を受けた。  同時に3つの実験を並行して行うらしい。  家永が引いてきたクーラーボックスから実験の器材を取り出した。 「……それ、食材じゃなかったんだ」  と菊池が言う。 「一週間分の食材は、宅配業者に頼んで既に運んでもらっている」  実験の大事なものは、万が一のこともないよう多少重くとも自分の手で運んだのだ。 「一番厄介なのは、このシャーレの観察と数値の3時間ごとのチェック。うっかり時間を忘れないよう頼む。今回の論文の肝になる実験だ」 「それって寝てる時もやるのか?」  門脇が質問すると 「そうだ」  家永は首を縦に振った。 「そのための人海戦術だ。菊池君はともかく俺と平野と門脇君で回せば、次の晩まで9時間は空くから、何の問題もないだろ?」 「なるほど。じゃあこっちの二つの実験もやり終わってて、空いている時間ができたら何したらいい?」 「不規則にはなるが、休憩時間だ。海に行ってもいいし、体育館で遊んでもいい。風呂もOKだし、仮眠してもいい」 「じゃあ、知己先生。一緒に海に行こうな」 「空き時間が重なったらな」  軽くあしらう知己に 「3時間は空く時間あるじゃねーか。絶対に一緒に海行こうな。約束だぞ」  門脇が食い下がった。 「不毛だぞ、門脇」  菊池が諫めると 「俺は、学生時代にできなかったことをしたいんだ。でないと家永先生の実験合宿に参加した意味がないだろ?」  まったく悪びれずに門脇が答えた。
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