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それを聞きつけた門脇が
「婿に貰う気か? 俺にしとけ!」
と即座に食いついた。
「そこは『やめとけ!』……じゃないんだな、門脇君」
アイスをつつきながら、家永が冷静に突っ込んだ。
(門脇の発言を深堀すると、大変なことになりそうだ)
と思った知己は
「いや、昨今は家事や料理が出来る男子がモテるじゃないか。だから、近藤が菊池のこの姿見たら惚れるんじゃないかと思って」
と呟いた真意だけを伝えた。
近藤大奈とは、菊池の思い人である。
「無理だろ? よく一緒にいるけど、近藤と泊りに行けるほど盛り上がってはいないようだぞ」
門脇が答えた。
「近藤は、この盆に帰省する友達と連日遊ぶ予定らしい」
アイスを食べながら、知己が
「なんで門脇は、そんなに近藤のスケジュールに詳しいんだ?」
ふと浮かんだ素朴な疑問を口にした。
「あー………………………、御前崎に聞いた」
門脇がアイスを食べ終わり、ガラス製の器に小さなスプーンを投げ込むと、チンという涼し気な音を立てた。
(あ。これも深堀したら、ヤバイやつだ)
知己は即座に話題を反らすことにした。
「こ、この添えられているミントが、おしゃれでいいな!」
「おしゃれで添えているわけじゃないと思うぞ」
家永が答える。
「ハミガキの代わりだろ?」
続いて門脇が答え、器のミントを摘まんで食べた。
「そんなことも忘れたのか、平野?」
家永とついでに門脇にちょっと残念な目で見られて、知己は
「……ど忘れしてただけだ」
と門脇と同じようにミントの葉を口に放り込んだ。
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