慶秀大学海浜研究所 5

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「ああ、そうか」  家永の方が察した。 「21時までに帰ってくれば?」  さりげなく言うと、門脇も 「今、19時だし、海は目の前だし。んな2時間も泳がねーよ」  時計を見ながら言った。 (なんか……バレバレだな) 「せっかく海に来ているが、昼間は同時にやっている実験もあって、気が抜けない。夜はメインの実験だけだから余裕あるし。むしろ21時に帰ってこい。電話に出なかったら、あの性格の悪い坊ちゃんから痛くもない腹を探られる」  心底嫌そうな顔をする。他意はないのは明白だ。 「行こうぜ、先生ー! 夜の海も面白そうだし、門脇と二人っきりだなんて俺は絶対に嫌だ」  門脇と菊池は既に行くつもりだったらしい。 「こいつらだけじゃ心配だ。思い出せ、平野。何の為にここに来たのかを」  アイスを一旦テーブルに置いて、家永が言うと 「え? 実験の為じゃないのか?」  知己は聞き返した。 「保護者として、ついて行ってやれ」 「俺、こいつらの保護者代わりでここに来てたの?」  再度心配になって聞くと 「違うのか?」  「似たようなもんだろ?」  門脇と菊池に次々に言われた。 「保護者は冗談だが、海からの帰りにスーパー寄ってスイカかパイナップルを買ってきてくれ」 「なんだよ、それ」 「食う事しか、今、楽しみがないんだよ」  そういうと家永はアイスを片手に実験室に行ってしまった。  それで仕方なく、知己は海に行くことになった。  門脇も菊池も水着に着替え、上にパーカー一枚を羽織って、知己が来るのを待った。  菊池は大きな浮き輪も準備していた。 「準備できたぞー」  と部屋から出てきた知己を見て、門脇はがっかりした。 「何、それ。先生。UV対策? 太陽出てないぞ」  知己は、サーフパンツにラッシュガードを着こんでいた。 「……分かっている」 「暑くない? 脱げば?」 「……クラゲ対策だ」 「まだ、ギリでクラゲは大丈夫じゃない?」  盆を過ぎるとクラゲが出るというが、かたくなに肌を見せようとしない知己に (絶対におっさんの入れ知恵だな)  と門脇は判断した。 「……まあ、いいけど」  本当は、よくない。 (久しぶりに先生のB地区を拝もうと思ってたのに) 「ブーメランとかワンショルダーとか期待してたのに」 「なぜ、そんなものを俺が?」
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