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ゲーム 開始 5
「やつれたな、平野」
「おぉーーーーーっす……」
一か月ぶりに会った家永の声に反射的に右手を上げて反応するものの、覇気がない。語尾に至っては消え入りそうだ。家永は昭和の頃に流行った「20時だよ、全員集合!」のチョーさんの元気ない版を見ているようだと思った。
「ゲームは難航しているのか?」
「見れば分かるだろ」
すっかりやさぐれて答える。
5月の第三土曜。
公園で待ち合わせしたが、そのままベンチに腰掛けて二人は話し始めた。
どこに行くにも気力が湧かない様子で、近くの自販機でコーヒーを買うと初夏の日差しを避けるように木陰に佇んだ。
今の状況を家永に当たっても仕方ないとは思うが、知己は今「八方塞」という言葉の意味を噛みしめていた。
主催者を見つける。
言うは簡単だが、どうやって見つける?
今にして思えば、ルールさえ分かれば首謀者を当てる方は簡単だった。
知己が指名した後に、生徒たちの視線の集まる先を調べたらいい。おかげで、無駄に首謀者当てスキルだけは身に付いた。きっと知己の将来、この先何の役にも立ちそうにないスキルだが、それだけはかなり上がった。
だけど「主催者見つけ」に関しては、そういう視線のヒントはない。
主催者がなんらかの方法で、次の首謀者を任命しているのは分かる。
その方法は、主催者のやりようによっていくらでもあるのだ。
知己が生徒たちを見ていない隙をついて、次のやつを決めればいいんだから。指で次の人を指してもいい。何かしら、合図を送ってもいい。より精度を高めるなら、ノートか何かで次の首謀者の出席番号でも書いて全員に知らせるのもできる。
それは知己が教科書を見ている時、黒板に向いて文字を書いている時。
知己は心の中で、何度
(だるまさんが転んだっ!)
をやってみただろう。だが、相手は一瞬の隙をついて首謀者の変更を行っていて、一向に尻尾を掴ませないでいた。
授業中、ずっと生徒を見つめ続けるのは不可能だ。
(そうだ……! ノートを集めてみるか?)
と思ったが、きっと主催者も化学・生物のノート以外のノートを使って任命しているだろう。
【挿絵を上げてみました。】
https://estar.jp/novels/25306033/viewer?page=344
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