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菊池は素直に頷いたが、門脇はまだイライラしている。作戦失敗が気に入らないで怒りが収まらないようだ。
腹立ちまぎれに
「菊池ぃ!」
ずぼっと菊池から浮き輪を取り上げ
「ほーら、取ってこーい!」
と、岩から放り投げた。
これはもちろん特訓でも荒療治でもない。
ただの嫌がらせだ。
「あぁーっ!」
浜まで20mはありそうな岩の上で、菊池が哀し気に叫ぶ。
「酷い……」
知己は眉間を押さえた。
リアルジャイアン……健在だ。
浮き輪は波に乗って、どんどん浜に吸い寄せられるかのように遠ざかる。
とても菊池に泳いで取りに行くのは不可能だ。
浮き輪なくして、菊池は戻ることは無理だろう。
門脇を見ると、ニヤリと悪い笑顔を浮かべていた。
「せんせぇ……」
情けない声で菊池が知己に縋る視線を送ると
「……仕方ねえなぁ」
ボソリと呟いて、知己は浮き輪を取りに海に飛び込んだ。
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