ゲーム 開始 6

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ゲーム 開始 6

「せーんせ! 困っているようだね? ヒントいる?」  放課後の理科室に元気よく飛び込んできて、章が言う。 (おい。今、思いっきり「ヒント」って言っちゃったぞ)  そっと後ろに付いてきている俊也を伺い見るが、どうやら気付いてなさそうだ。 (須々木が鈍くて助かった……)  と本人を前に絶対に言えないことを思う。 「いらん」  と断った後に、知己はポロリと 「大体、お前らずるいぞ」  と本音が声になって出ていた。 「何が?」  章が「ずるい」と言われたのに、ことさら嬉しそうに尋ねる。 「コロコロ、ルール変えやがって」  明日の実験用器具をコンテナに移しながら、知己は答えた。 「失礼な。あんたらと違って、僕たちは都合よくルールを変えてませーん。ってか、ルール変えたらゲームになんないじゃん!」 「じゃあ、なんでだよ? ルールは変えてないかもだけど、ゲームする日としない日があると主催者が絞れねえ」 「お、そこまで分かっているのなら……」  と章が嬉しそうに言ったところで、さすがに俊也が看過できぬとばかりに咳ばらいをした。 「まあ、そういう訳だから」  章がウィンクまじりに言うと、知己は憮然として 「何がそういう訳だよ。もう、お前ら、帰れ」  手元は休めずに言った。 「あー? 今、来たばっかなのに?」  意外にも俊也の方が不満を訴えた。 「今日も門脇は来ねえぞ」  答えながら、コンテナの中身を確認する。 「それ、適当に言っているでしょ? 適当に言って追い返そうとしているでしょ?」  章が知己の傍に寄り、頭をコンテナと知己の間に差し込み、知己を見上げるようにしながら言った。 「適当じゃねえ」  そう言って、知己は白衣のポケットから携帯を取り出し、操作した。 「あいつ、今、実験に付き合わされているからな」  LINEで家永が送ってきた写真を確認しながら言うと 「はあ?」  章が素っ頓狂な声を上げた。状況が理解できないらしい。 「家永……あ、門脇の大学の先生なんだが、そいつからだ。門脇を3時間置きにデータ取る実験に手伝わせているらしい。だから、来れない」  知己は、「嘘じゃないぞ」とばかりに写真を見せた。  まさに5分ほど前の時刻の表示と白衣着て忙しそうに実験データを取る門脇の姿だった。
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