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「そ……だったのか?」
ほんのりと笑顔浮かべる知己だが、まだどこか納得しかねている。
(まあ、そうだろうな)
嫉妬に駆られて勢いでした告白は、3年前。
今の知己の記憶には残っていまい。
「だって……」
と続いた。
「まだ、続きがあるのか?」
まるで駄々っ子を相手にしているかのような家永の態度に
「だって、男同士の恋愛ってどうするかよく分からないけど、それでも……、全然……触ってもくれないし」
負けじと知己が言う。
(平野……20歳の頃は、こんなにギラギラしてたのか?)
と、思いながらはたと気付いた。
(そっか。こいつ、一カ月間ほったらかされているもんな)
「分かった」
「分かったのか?」
知己は言いにくい自分の気持ちがやっと家永に通じたようで喜んだが、家永は淡々と確認してきた。
「今のお前の状態が分かった」
「なんだ、それ?」
「冗談じゃなく、触ってほしいのか?」
「や、その……」
ド直球な質問に、知己は答えづらい。
「お前は男の体なんか触ったって面白くもないだろうし……」
「いや、面白いとか面白くないとか、そういうもんでもないだろ」
「そうだけど……でも、俺は違うみたいだし」
昨日、キスで変化した自分の体に知己自身が一番驚いていた。
「俺、記憶はないんだけど……お前とキスできて嬉しいというか、すごく……か、体が熱くなったというか、か、感じたみたいで……あ、何言ってんだ、俺……忘れてくれ」
そこで家永が「はー……」と長めの溜息を吐いた。
「忘れていいのか?」
「……」
「本当にいいのか?」
「………………………よ、よくはないっ……」
「じゃ、触って欲しいのか?」
「………………………って、ほしい……です」
何やら誘導されたかのように、知己は言葉を口にした。
不本意な形で本音を曝け出した知己は
(な、何なんだよ、もー!)
と思っていたら、不意に家永が顔を寄せてきた。
「あ……」
耳の付け根に唇を押し付けられて、思わず知己は目を瞑った。
家永が肩に腕を回し、病院服の合わせからもう片方の手を差し入れる。
病室はクーラーが効いているので、知己は肌着を着ていたのが裏目に出た。
「んっ……!」
家永が手探りでそれを探すと、そのこそばゆい刺激に知己は耐えられずに声を漏らした。
「一応、病院だからな。あんまりできないかもだけど……」
「……ん、ぁ……」
知己がヒクリと反応したので、その位置が分かって、家永が摘まんだ。
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