ゲーム 開始 6

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 ルールは変えてない。  でも、ゲームをする日としない日がある。 (って、どういうことだよ?)  知己は、自室に帰って章の言葉を考えていた。 (ずっとゲームしてくれてたら、いつかは主催者を当てられるのに……)  色々あって、二か月弱。  なんとかなりそうなのに、なんともならないもどかしさに家永が心配するほど、知己は疲れ切っていた。 (……って、あんなことされない方がいいに決まっているじゃねえか)  普通に授業できる喜びよりも、ゲーム解読に躍起になっている自分に (俺はどMか!?)  とりあえず自分ツッコミを入れた。 (……)  コツを掴んですぐに首謀者を見つけることができるようになったものの、言ってみれば参加してない吹山章を除く全校生徒からの授業妨害。これはまるで知己の存在自体を否定されたようで、すっかり気分は鬱。思考は一向に晴れずにいた。 (うーん。堂々巡りの俺の頭じゃ分からんな)  おもむろに知己はデスクから立った。 (とうとう……この日が来たか)  知己は観念する。 (こいつだけは使いたくなかったけど……)  ちょっと中二病っぽく思ってしまう辺りで、自分がどれだけ追い詰められているのか、思い知らされる。 「将之ー。ちょっと聞きたいことがあるー」  自室から顔だけ出して、廊下越しに将之を召喚すると 「何ですか? 先輩ー」  秒で駆けつける180㎝の大男が愛おしい。 「ごめん。何かしてた?」  呼びつけたことを詫びると 「いえ。あ、でも、ちょっと待ってて」  将之は、せわしなくまたキッチンに戻っていった。  ほどなくして、将之はカップ二つを持ってやってきた。 「そろそろ休憩かなと、ちょうどコーヒーを入れてたので」  知己のデスクの上に置いた。 (やばい。可愛い。やばい。可愛い)  知己はせりあがってくる言葉を、ぐっと飲み込んだ。  だが、この可愛い大男は、手段を選ばない。知己がこんな憂き目に遭っていると知れば、どんな報復措置を取るか分からない。 (できるならこいつにだけは頼りたくなかったんだけど、こういうの得意そうだし、意外と第三者からの方が冷静に考えられるかもしれないし……。ただ、迂闊なことだけは言わないようにしよう)  だが、もっとも心配なのは自分自身の語彙力だと、知己が一番よく分かっていた。 (それで、こいつと何回揉めたやら……)  同居しているのだ。多少の衝突は覚悟の上。だが、衝突の後の将之のやり方は、大抵卑怯で意地悪で陰険だと知己は思っていた。
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