中位将之という人物 2

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「説明するっておっしゃってましたよね。だったら、早くしてもらえませんか? 僕はこの後に先輩を問いたださなくっちゃいけないんですから」 「それ、やめてくれ」  予想通りの頭痛案件だ。  すかさず止めた家永に 「はあ?」  将之がいっそう険しい顔になった。 「さっきも言いましたが、どの口が言いますか? 家永さんはそういうこと言える立場じゃないんですよ。しかも、先輩ときたら僕の目の前であんなことしておいて、慌てて亀にみたいに布団の中に隠れて。そんなことでなかったことにできるとでも思ってるんでしょうか。一か月僕に会えなかったとしても、あれはない。酷いごまかし方ですよね? しかも何ですか? 家永さんばっかり庇って僕に何の弁解もないって……誠意なさ過ぎでしょ!」 「……分かっている。だけど」  家永に、全てを言わせずに将之が被せてきた。 「何が、どう分かっているんですか? やっぱり直接本人に文句言わなくっちゃ、気が済まない」  なんとも利己的な意見だ。 「やめろ。理由があるんだ」 「はあ? 理由?」  将之が目を剥いた。 「どんな都合のいい理由を並べる気ですか? 世の中ではそれを『言い訳』と言うんですよ」 「俺はなんと言われてもいいから、聞け」  とにかく話を聞いてほしくて家永が言うと、将之が「ちっ」と舌打ちをした。 「それが一番むかつきます」  と、続けた。 「何なんですか、二人して庇い合って。見せつけて。被害者ヅラをして。  悪いのはそちら。だのに、なんで僕が悪者みたいな感じになってんですか?」  出るわ出るわ、不満の連続だ。 「あーあ。やっぱりやめときゃよかった。一カ月も空けたらあの人が家永さんとどうなるかなんて、考えたら簡単なことだったのに。  先輩がずーっと家永さんのことを絶対的に信頼していると知ってたのに。でも以前、僕の方が大事だから家永さんと会わないようにするとか、可愛いこと言ってたんで安心してたのに。それに家永さんがあんまり切羽詰まったお願いをしてきたもんだから、以前の虫垂炎の借りがどうとか言ってきたし。家永さんも、もう、とっくに諦めたと思っていたのに…………残念だな」  恩着せがましく、遠回しに家永を責めたてていた。  それに気付かない家永ではない。 「……お前、自分の話ばっかで俺の話を聞く気ないな」 「そうかも」  テーブルに対して水平に向き、将之は足を組んだ。 「というか、さっさと喋ったらどうです? を」  まったく聞く気のない横柄な態度だ。
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