中位将之という人物 3

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(これは……)  先ほど飲んだばかりの鎮痛剤では到底間に合わず、頭痛から派生する症状ではないだろうか。 (やっぱり嘘じゃない。  家永さん達の話を信じたくなくってここに戻っては来たけれど、こんなの目の当たりにしたんじゃ……)  自分のことを忘れているだの、無理に思い出そうとすると体調にきたすというのも「信じたくない」一心だった。  結果、知己がこんなことになっている。  将之は、苦しそうにうずくまる知己の背中をそっと撫でた。 「……」  しばらくして、ようやく嘔吐が治まった知己が 「すまん……初対面の人にこんな所見せちまって」  と詫びた。 「いえ……」  将之は知己の背中をさすりながら (初対面ではないですし、どちらかと言うとさっきのキスの方がって感じです)  と言うのを、なんとか堪えた。  きっと、めちゃくちゃ知己は気にするだろう。自分の言動で、これ以上知己が具合悪くなってしまうのも嫌だ。  大きな体相応の大きな将之の手で背中を撫でられると、温かくて心地よい。  知己が、 「……優しいんだな」  と言うと、将之が 「なんだか、つわりの妻でも見ているような気分です」  と答えた。 「中位さんは若いのに、奥さんがもう居るんだ?」 「若くみえますか?」 「少なくとも家永より若いだろ? いくつ?」  家永をいちいち引き合いに出されるのは決して面白くないが、自分に興味を持ってもらえたのは嬉しい。 「アラサーです。来年の2月14日で29(歳)」 「ふうん」  知己は自力で立ち上がろうとしたところに、将之がすかさず手を差し伸べた。それがあまりにも自然な動作だったので、知己はほんの少しだけ躊躇したが、その手を取ってゆっくりと立ち上がった。  洗面台に寄ってうがいをして、ベッドに戻る。  その間もずっと将之は傍で知己が転ばないように気を配っていた。 「ありがとう」  ようやくベッドに戻ると 「奥さんも……つわり酷いのか? いつもこんな風にお世話を?」  将之の手慣れた様子に知己が訊いた。 「ああ、誤解招く言い方しましたね。妻ですが、籍は入れてないです。妊娠もしてません。ただ、妻のつわりってこんな感じかな? と思っただけの話です」  
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