中位将之という人物 3

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「同棲?」 「そんな所ですね」 「聞いてもいいのかな? どんな人?」  精神年齢20歳の知己が、いかにも興味ありげに訊いてきた。 (珍しいな、先輩がそんなことを聞いてくるなんて)  と、将之は思った。 (中身が若い所為かな?) 「妻はとても綺麗で可愛くて、人見知りで引き篭もり体質のくせに一度関わったらやめといたらいいのに変に面倒見が良くって……。おかげで、なかなかのヒトタラシですよ。二人きりでもあまり素直になってくれなくって、本心を明かすのが下手と言うか、話下手って感じですね。そのくせ地雷踏んだら、粗暴で即・殴りにきますね」  人見知りで引き篭もりで、本心見せずに地雷踏んだら粗暴。 (怖っ……!)  知己の想像の中で、トンデモナイDV妻が生まれていた。 「へえ………………………それは……素敵な奥さんですね」 「はい。素敵な奥さんですよ」  なぜか誇らしげに見つめてくる将之に 「そ……う、なんだ?」 (こういうのを「惚れたよく目」っていうのか? 俺にはどこが「素敵」なんだかさっぱり分からないが)  知己はつられて笑ったが、その笑顔はひきつっていた。 (いやいや、他人のご家庭のことだし……)  知己が思っている傍らで将之も (迂闊なこと喋って、また頭痛起こされても、な……)  と思っていた。  どうやら、知己が訊きたがる分には頭痛は起こらないようだ。 (結局、家永さんの言う通りにするしかないのかな)  回りくどいのは好きじゃない……と将之はため息が漏れた。   「好きな人と一緒に住んでるのは、楽しい?」 「もちろんですよ」 「そっか」  知己は、何故か赤い顔してニコニコと嬉しそうに話を聞いている。 (そうだよ。家に帰れば、この人だって少しずつ色々思い出すはず……)  あまりにも知己がニコニコと微笑むので、将之は何気なく 「どうかしましたか?」  と聞いた。 「いや。俺もそんな風に過ごせたらいいなって思って」 「え? もしかして、何か思い出したんですか?」 「ん? 何かって?」 「一緒に過ごしたこととか……?」 「いや。俺の場合はこれから……なんだ」 「これから?」  嫌な予感がする。
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