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「今の話で分かるのは、先輩の行動は無関係ってことだけですね」
「は?」
「だって、先輩は常にやめさせようとしているんでしょ? でも、その子はゲームをする日もあればしない日もある。それなら、先輩の行動は関係ないってことになりませんか?」
「……う、うん。そう……なのかな?」
曖昧に知己は頷いた。
「そうなると……、ゲームするしないのには他に何か理由がありますよね」
「他の理由?」
考えてもみなかった。
彼らはただ単に自分に嫌がらせ目的でしているとしか思ってなかったからだ。
「ゲームしたくてもできない理由ってのを考えたらいいんじゃないかな」
「あっ!」
知己は目を見開いた。
「そうか。もしかしたら今度こそ、分……かった……かも……」
やはり曖昧な確信だったが、知己は、デスクに置きっぱなしで少し冷めたコーヒーを一気に飲み干した。
「『かも』なんて付けて。弱気な発言ですね」
約二か月も嫌がらせと授業拒否を受けたら、弱気にもなろう。
「将之。お前、天才……かも」
賞賛の言葉も弱弱しい。
「いちいち『かも』付けないでください」
と将之が言うと
「そういうところは、嫌い」
今度はきっぱりと知己が言った。
「今のは、『(嫌い)かも』を付けてほしかった……」
将之は久しぶりに知己の笑顔を見た気がした。
そんなキラキラの笑顔で、知己が
「ありがとう、将之。じゃあ、目をつぶって歯ぁ食いしばれ!」
「え? なんで、いきなり体罰的な流れになっているんです?」
とは言え、最近ずっと暗い表情だった知己。
将之も、一応知己の親友と認めている家永晃一と話したら少しは気が晴れるのではと、渋々黙認していた月一逢瀬から帰ってきてもため息ばかり。会話も生活もすれ違い気味で、やっと今日まともな(?)会話をした気がする。そんな知己の笑顔に、将之は逆らえる筈もなく、一抹の不安と共に目をぎゅうっと瞑った。
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