★中位将之という人物 4

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「……、家永……」  家永の胸に頭をもたれかけ体重を預けていた知己が、くぐもった声で呼んだ。 「なんだ?」 「パンツを、戻してくれ。その……も、……無理……っ、出そう……」  家永の手の中にあるものは、手の動きに合わせて先端からとろりと透明な液を垂らし、握っている知己の手だけでなく、重ねていた家永の手までも濡らしていた。  滑りがよくなって快感を享受しやすくなった知己が、時折びくんびくんと腰を揺らしている。  限界が近いのは、明らかだ。  目元を赤らめての必死の訴えを、家永は 「それじゃ窮屈だろ? このままイったらいい」  と聞いてはくれなかった。 「嫌だよ。病院の服やシーツに付いたら恥ずかしぃ」  気にする知己に 「大丈夫。汚さないようにするから。  こんなにガチガチになったら治まらないだろ? お前は一旦抜け」  と家永は諭した。 (家永にしてもらえるのは、すごく嬉しいんだけど、その分すごく恥ずかしいな)  先ほど「萎えた」と連呼していたが、それは嘘だ。  一カ月の間、構ってなかった知己の身体は、家永を思って自分で触れたくなるほど飢えていた。寸前まで高めていたものは、そう簡単に引き返せない状態だった。  家永に続きをしてもらえるのは、感情的にも肉体的にも有難い。だがこの状況は、知己にとってかなり恥ずかしい。 (……ってバカだな、俺。  俺達、付き合ってんだぞ。俺が覚えてないだけで、もっと凄いこともしてたんだろうに。家永にとって、こんなのごく当たり前で……)  してもらうのは、どうにも罪悪感と羞恥が付きまとう。だから必死で知己は「家永にされてもいい」理由を捻り出していた。  それに 「俺だけ……って、嫌なんだ」  と、もう一つの理由も言った。 「それはここが病院だから無理だ。諦めろ」  自分を絶頂寸前まで高めておきながら、家永は涼しい顔をしているのが悔しい。だけど、もうどうこう言っていられる状況でもなくなった。 「……うん」  時折、家永の指が直に自分の先端を責める。 「ここ、イイか?」 「うん……」  知己は目を瞑った。
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