★中位将之という人物 4

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(うわ……さっき、自分でしていたよりも数倍いい……)  目を瞑ると、感覚が研ぎ澄まされる。  家永の温かな手の感触、そっと知己のものに触れる指。どこを辿っているかが分かる。  白くかすみがかった頭で、知己はぼんやりと考えた。 (……「下着の中に出すつもりだったのか」って、俺に確認してたし)  きっと、達する直前で下着を戻してくれるだろう。  そう思うと、安心して達することができる。  ぬるりと家永が執拗に先端に指を沿わせて滑らせる。  知己を絶頂に導こうとしているのが伺えた。 「んぁ、っ……」  知己の声に甘さが濃くなる。 「……ぃ、ぃ……もっと……強く」  無意識に知己は、モジと膝をこすり合わせるような動作をした。絶頂まで後わずか。それまでには、もう少し強い刺激が欲しい。それを自然にアピールしていた。 「分かった」  家永は快感を探る動きから、強くて速いリズムに切り替えた。  それに合わせて、知己はより快感を得ようと貪欲に腰を揺すった。   「ぁ、はっ……ゃ……っ、ー……ぅ」  どうしても我慢しきれずに声が漏れてしまう。 「声……出るぅっ」  知己が嫌そうに顔を背けた。  病室で嬌声など上げられるはずもない。  たまらず家永が唇を塞いだ。  強引に舌をねじ込まれ、知己は夢中で絡めた。  声も息も奪い取られるような荒っぽいキスに (あ、家永も……?)  涼しい顔をしているように見えただけで、家永もどうしようもなく高ぶっていたのだと分かった。 「んっ……!」  閉じた瞼の裏で光が爆ぜそうな感覚に、知己が唸った。きゅうっと腰や後孔に力が入り、締まるような感覚に、知己は肩で家永の胸を強く押した。  家永から離れた唇で 「ぁっ、ぃ、イく……ぅっ……!」  と告げた。  我ながら (AVのようだ)  と思ったが、仕方ない。  こんな切羽詰まった状況で、代わりになる言葉を思いつけなかった。  家永に、自分の欲望が飛び散らぬよう下着で覆ってもらうタイミングを知らせる為だった。
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