★中位将之という人物 4

9/16
前へ
/778ページ
次へ
 知己の状態を察した家永は、一瞬離れた後、知己の下肢に顔を下ろした。 (……え?!)  新たな感覚に、びくんと腰が揺れる。  思わず目を見開くと、暗闇の中、窓からの光が当たって家永の背中がかろうじて見えた。  知己に、とてもその先まで見る勇気はない。  だが、さっきまで家永の指に弄られていた部分にしっとりとした温かな感触に包まれている。 (嘘……? 何? 家永? 口で? 俺の……?)  今、起こっていることがとても現実だと思えなくて、否定の言葉ばかりが次々と浮かんだ。 「嫌っ……! 家永っ!」  慌てて飛び出した制止の言葉は拙いそれだけ。  家永を止めたい両手も一緒に握り込まれているのだから、どうしようもない。 「うぁっ!」 (往生際悪い!)と責めるように家永の舌が押し付けられた。敏感になっている部分に容赦なく快感を叩きつける……怯む知己を強引に絶頂に押し上げるような動きだった。 「や、やめっ……!」  舌の蠢く感触が、その部分を掴んでいた知己の指に時折触れる。 「あっ……、ぁ……ぁっ……」  その度に知己が切なそうに吐息を漏らした。 (も、無理……っ!)  ギリギリ踏ん張っていたが、突然の大きな波が襲ってきたかのような感覚。  もはや堰き止めることなどできなかった。 「ぅ……」  知己は一瞬低く唸った。  溜まった甘い疼きが、一気に出口を求めて走った。知己の腰がビクビクと揺れ、病院着をまとわせた足が宙を彷徨う。波にのまれる恐怖に似た感覚に、知己は息を止め、ぎゅうっと強く目を閉じた。 「……んーーー……っ!」  次に訪れた爆ぜる感覚に、知己は身を任せるしかなかった。
/778ページ

最初のコメントを投稿しよう!

241人が本棚に入れています
本棚に追加