ゲーム 開始 6

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 ちゅ。  右の頬に柔らかな感触。 (え? 今のは?)  驚いて目を開けると、知己の肩が将之の目に映った。 (もしや今のは、先輩からのキス……?)  稀有な出来事に、将之の動きが一瞬フリーズする。うっすらと目を開けた将之に映るのは、少し離れた知己のニヤリとシテヤッタ感満載の顔。 「ありがと、な」  知己は嬉しさのあまり普段しない行動に出た。もちろん、相手が将之だったというのもある。 「……」  呆けていた将之が、突然ぐるっと顔を捻り 「こっちも」  図々しく左頬を差し出した。 「はあ? なんだ、それ?」 「右頬にキスされたら、左の頬を差し出せ……と昔の偉い人が言ってました」  ちょいちょいと左頬を指さして、ねだっている。 「そうか。多分、それはお前の誤解だ」 「いいえ。誤解じゃないです。だってその人は『隣人を愛せ』とも言ってましたから」 「え? ちょと待て」  知己の言う言葉に耳を傾けず、 「だから、今から先輩を愛しまーす!」 「うわ!」  知己の目線は一気に180㎝に上がる。将之は慌てる知己を捕まえて抱えると、一気に立ち上がった。 「俺、その偉い人に心当たりあるけど、お前の言うような意味では使ってなかったぞ!」 「じゃあ、きっと僕の言っている偉い人と人違いだと思われまーす」  知己の歓喜のご褒美キスに、この男もご機嫌スイッチが入ったらしい。  いう事などまったく聞かずに、将之は知己をお姫様抱っこして嬉しそうに寝室に連れ込むのだった。 【挿絵を上げました】この時は、こんな感じ https://estar.jp/novels/25306033/viewer?page=319
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