中位将之という人物 5

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「なんで家永のこと、嫌いなの?」 「嫌いになるでしょ。あんな所を見せられたら」  さらりと言い返されて、知己はまた「ぅっ」と言葉を詰まらせた。 「人がちょっと目を離すとイチャイチャして……いくら記憶ないからって酷いですよ」 (一体、中位さんはなぜこんなに怒ってんだろう……?)  二度もトンデモナイ所を見られた知己は 「……あんたが変な時間に来るからだろう?」  思わず言い返した。 「変な時間ですみません」  と言う割に、ちっともすまないと思ってない言い方だ。 「アメリカからめいっぱい急いで帰ってきたんです。あの時間じゃなきゃ行けなかったんです。二度目は……ぶっちゃけ、寝坊です」 「寝坊?」  意外だ。 「時差があって、いまだ日本の生活リズムに戻れないんですよ。昨日は目が覚めたら早朝でした。さすがに見舞に行くには非常識な時間でして、でも家永さんのことを考えてたら眠れなくって、仕方ないので朝食とってもう一度寝直したら……あんな時間に目覚めました。  やはり、後、10分早く行かなくちゃダメでしたか?」  最後は明らかな嫌味だ。 「……そういう所が、家永に嫌われる所だと思う」 「はん。上等ですよ。好かれたくもない」  せいせいすると言って、将之はコーヒーを傾けた。  知己のことを、さも当たり前のように「先輩」というこの男。  一体、どうしてこんなに家永のことを嫌うのか。 (「先輩」と言うくらいだから、俺の後輩なんだろうな)  隣の男を改めて、まじまじと観察する。 (背、高い……よな。多分、俺の憧れの180㎝は越えている。それに足も長くて……え? ちょっと待て。この人、よく見ると顔、凄い。めちゃくちゃ整ってる。壮絶なイケメンじゃねえか。髪もくせ毛っぽいけどふわっふわで綺麗で柔らかそう。わ、ちょっと触りたいなぁ。アイドルかモデルみたいな感じもするけど、いつもスーツ着てる。お堅い職業なのかな。……の割には家永を殴り飛ばす筋力・腕力もあるみたいだし)  観察して分かったことは、将之が非の打ちどころのないイケメンだったことだ。 (神様、すげえ! どうやって、こんなイケメンを作った? お父さんとお母さんも、さぞやきれいなんだろうな。メンデルも驚きの優性遺伝の法則だ)
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