中位将之という人物 6

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 まるで抜け殻になったように「通話終了」の文字を家永は見つめた。 「何だ? 知己先生、一緒に帰らねえって言ってきたのか?」  電話が終わっても微動だにしない家永を門脇が現実に引き戻した。コードレス掃除機の柄に両手と顎を乗せて、かなり不満そうだ。 「悪いのは………………………君だ」  ぼそりと力なく呟く家永に、門脇は「え? 何? 何の話?」と聞いたが、家永から返事はない。 「記憶ないくせに一人で帰れるのか?」 「帰れるだろ? 子供じゃない」 「でもさ、心配じゃねえ?」  おもむろに門脇は自分の携帯を取り出した。 「よせ。何をする気だ」 「一緒に帰ろうぜって言うだけ」  と、手早く暗証番号を入力する。 「ふざけるな。やめろ」 「別にいいじゃん。乱暴なことはしないって。俺、先生と一緒に帰りたいんだよ。純な男心を分かってほしいな。何のために二日間もおとなしく実験ばっかしてたと思ってんだよ」  途中までは一緒だが、家永、菊池と順に別れる。最後まで一緒に居られるのは門脇である。  それを楽しみにしていた門脇は、まさにこの瞬間にも電話をかけそうだ。 「やめろってば!」  家永が門脇の携帯を取り上げようと掴みかかった。  理性の塊だと思っていた家永のまさかの行動に 「うわぁ!」  不意を突かれて、門脇は掃除機ごと後ろに倒れた。  たまたま倒れた方向が良かった。  仮眠用のソファの上だ。 「いてて、何すんだよ? 先生ー!」  抗議に叫ぶ門脇の上で、家永が携帯取り上げようとその腕を掴んだ。  まさにその時、実験室の扉がバンと勢いよく開いた。 「菊池二等兵ー! 無事、食堂清掃の任務を終えて帰還しましたぁ!」  敬礼しながら言う菊池の目に入ったのは、ソファの上で組み敷かれた門脇と彼を押さえる家永の姿。 「ひぃ!」  と菊池はたちまち凍り付いた。 「ちょ、まさか二人がそんな仲とは……!」 「「はあ?!」」  声を揃えて一度菊池を見つめ、その後にお互い見つめ合う門脇と家永のシンクロっぷりに、菊池はますます 「お、お邪魔しましたー!」  と慌てふためき 「俺のことは気にせずに、続きをどうぞー!」  ドアを荒々しく閉めて出て行った。  すかさずドアの内側で 「続きなんてねえ(ない)!」 「勘違いするな、菊池君!」  門脇と家永があらん限りの声で叫んだが、それが聞こえないくらい動揺した菊池は (ど、どうしよう。御前崎ちゃんの心配してた通りになってたよ……)  震える指で、御前崎美羽の親友・近藤大奈にLIN○を送るのであった。 340f62a5-97fc-43a6-97f5-5a89db8af313
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