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「じゃあ、もう言っちゃってもいいかな」
むしろ言ってくれと言いたげに、知己は将之を見つめた。
「僕が好きなのは、あなたですよ。家永さんじゃない」
最後のは勘違いしていた知己への嫌味だと分かる。
(だけど、それもこいつだよな)
と、なぜだか嬉しく思えた。
「でないとアメリカから最短15時間、休暇切り上げて、不眠不休で戻ってくるなんてしませんよ。
って、……頭痛は大丈夫ですか?」
どう反応していいのか分からない知己は、ただその場に立ち尽くしている。
酷い頭痛でも引き起こしたかと将之は心配になった。
「う、うん……ぼわんぼわんするけど、多分、そこまでない……みたいだ」
頭をそっと包むかのように手で抱え込んでみたが、前回ほどの強烈な頭痛は起こってないようだ。
「それよりも、俺、両想いってことで喜んでいいのかな?」
確認するように知己が呟く。
「20歳の先輩って、すごく素直で可愛いんですね」
「30歳の俺は、そんなに捻くれてて可愛くないのか?」
「いえ、年を重ねた変化球の愛情表現はそれはそれで可愛いですよ」
「……それ、褒めてないだろ」
「そんなことないですよ」
そう言うと将之は両手を広げた。
ベッドに腰掛け、ウェルカムのポーズだ。
そして意味深に「どうぞ」と微笑んで見せる。
(あ。もう、怒ってない)
知己は嬉しくなった。
(だけど、どうしよう……)
以前はそういう関係にあったとしても、今の将之はまだ会って3日目の人なのだ。
(やはり、ここはあそこに行くべきなんだろうな)
あそこ=将之の膝の上である。
(行くべきだろうけど……俺にはまだハードル高いなぁ)
まごまごと躊躇していると
「どうしました?」
将之に怪訝な顔をされた。
「いや、あの……えーっと」
「以前の先輩は、普通に僕の膝の上に来てましたけど?」
「そう、なの……か?」
とはいえ、好きだと自覚したばかりの将之の膝の上に乗るだなんて、かなり緊張する。
(ハードル高すぎて、棒高跳びのバーのように思えてきた……)
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