★中位将之という人物 8

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 羽織っていた綿シャツ、タンクトップまでは調子よく脱げた。が、ジーパンのベルト外してファスナーを下ろし、腰に手をかけた所で 「あ……!」  小さな声を出して、知己の動きがピタリと止まった。 「……」  知己が、それ以上動けずにいる。 「あの……。やっぱり…‥‥これ以上は、ちょっと無理……」 「は? 今更? 何故? どうして?」  察するに、下着姿になるのを恥ずかしがっている。 「いや、あの、その、下着が……」  連泊を希望し、これからすることはそれ以上のことだろうに、下着姿ごときでまごつくとは。 (うぶでおぼこい反応は新鮮で可愛いけど、こんな所でおあずけなんて!) 「下着が何なんです?」  苛立たし気に将之に聞かれ 「いや。あ、あの……パンツが……ちょっとエッチで恥ずかしいのを履いていて。中位さん、幻滅しない?」  モゴモゴと知己はきまり悪そうに答える。 「はあ?!」  怒り狂った将之の行動は早かった。 「どんなの履いてんです?!」 「ぎゃぁーーーーー!」  悲鳴上げる知己に一切構わずに、ジーパンを一気に引き下げた。 「ひ、ひどい……いくら中位さんでも……、こんなこと……」  じろじろと不躾な視線を感じて、知己は抗議の声を上げた。 (うぅぅ、恥ずかしい……。  でも、なんか……既視感ある。こんなこと、前にも誰かにされたような……?)  かなり若い男にこんなことをされた気がしたが、それが誰かと思い出す前に 「……なんだ。普通じゃないですか」  と鑑定し終わった将之が言うので、知己は現実に引き戻された。 「え? この下着が、俺の『普通』なのか?」  シルクの上品な光沢放つ黒いボクサーパンツは、今の知己にとってかなりエッチなおとなの下着に思われた。 「てっきりブーメランかワンショルダーのけしからん下着を履かされているのかと、焦っちゃいましたよ」 (あ。これもなんか既視感……)  つい最近、自分のパンツらしきものを見られて、そんな感想を言われたような。 「履かされて……って?」 「あの真面目な顔したむっつりスケベが、そんな下着を履かせて恥ずかしがる先輩を隣に実験手伝わせて悦ぶマニアなプレイを強要したのかと思いました」  やはり途中から将之の日本語が理解できない知己だったが 「家永のことを悪く言うな」  と、とりあえず突っ込んだ。 「家永さんとは言ってませんよ」 「……」 (家永、ごめんな)  心の中で詫びた。
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