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「いや、それ、絶対に無理だから。いくら中位さんでも無理! いや中位さんだからもっと無理! 無理だってば! 無理って言ってるだろぉっ!」
腰を掴んで離さない将之を知己は懸命に引き剥がそうとしていた。
「……往生際悪いなぁ」
「とにかく一回シャワー浴びさせてくれ!」
涙浮かべて懇願すると
「あ、もしかしてストレス感じてます?」
やっと将之は顔を寄せるのをやめてくれた。
「俺のストレスが分かるのなら、なおさらシャワーに行かせてくれ!」
ここでされたら、何の為にバスルームに来たのか分からない。
「仕方ないですね。嫌がる先輩を無理やりにするのも気が引けます(嘘)ので、お風呂にどうぞ」
将之は浴室へのドアを開けて全裸に剥いた知己を入れ、知己を一人残して自分は戻っていった。
(『嫌がる俺を無理やりにするのが気が引ける』と言ってたが……あれは絶対に嘘だな……)
意地悪い微笑み浮かべた将之の顔を思い出しながら知己は手早く全身にシャワーを浴びると、ジャグジー付きの大きなバスタブに浸かった。
急な二人宿泊にも対応できる広い部屋の大きな間取り、ダブルベッドに豪華すぎる風呂。
察するに、将之が泊っている部屋はスイートルームって部屋だ。
ホテルと言えばユースホテルかビジネスホテルしか使ったことない20歳の知己は、
(こんなでっかい風呂は、久しぶりだなぁ)
嬉しくなって肩まで沈んでみた。
そこに、不意に浴室のドアが開いた。
「そろそろいいですか?」
と将之が、ずかずかと全裸で入ってくる。
「わわわ! え? 何?」
将之の突然の行動よりも一糸まとわぬ堂々たる姿に、知己は慌ててバスタブの端まで逃げた。
将之は幼少期より剣道をしていたので、体幹を鍛えられていてやたらと姿勢が良い。それに180㎝超えた恵まれた身長に、相手の動きを読んで打ち込むための俊敏かつ美しい筋肉だった。
(うわあ、すげえかっこいい……。こんな綺麗な筋肉は人体模型以上だ)
あまりの骨格の美しさや筋肉の眩しさに、逆に見ていいものか迷われて知己は視線をそらした。
「何って……『一緒にお風呂入ってた』って言ったじゃないですか」
「え、あ……!」
(そうだった!)
「先輩の『キスしてもらうと思い出す』というあざと可愛いおねだり系ロマンティック記憶回復方法ですが」
言葉に悪意しか感じられない。
「それで言ったら、最後までシたらもっと記憶取り戻せますよね。僕にすべてをお任せください」
ついでに下心が上乗せされた。
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