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もしかしたら、これでもう永遠にこのゲームを終わらせることができなくなったのかもしれない。
クラスの者全員が呆然と知己を見つめていた。
水を打ったように静まりかえる理科室。
知己は居心地の悪さを感じつつも、
(この後……どうしよう)
とぐるりと見渡した。
「……」
みんなと同じように知己を見つめていた章が、突然、三日月のように目を細めて笑ったかと思ったら、手を口に当てた。
(なんだ?)
と思っていると、章はリップ音こそさせなかったもののモーションで投げキッスをしてきた。
(はあ?! 何、やってんだ、あいつ……)
意味が分からず知己が首を傾けた時だった。
入口近くの席からガタンっとけたたましい音を立てて椅子から立ち上がる者が居た。
知己は、慌てて今度はそちらを見る。
「……」
突如、離席した少年は、分厚いレンズのメガネにマスクをかけていて顔はよく見えない。分かるのは艶々とした黒髪の、章よりも華奢な印象を受ける小柄な少年だった。
すかさず知己は、出席簿で自分が指している名前と少年を交互に見た。
(やはり、『梅木敦』……!)
予想していた名前と立った少年が一致し、知己は確信した。
「いいですよ。言いたいこと、話してあげます」
少年は小柄な体に似合わず、腕を組み、胸を張った恩着せがましい態度で話し始めた。
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