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目元を赤らめて、「ふっ……、ぅっ……」と短めの荒い呼吸を吐いて、必死に快楽をやり過ごす。
(俺、するのもされるもの好きだったって……)
言われて、納得するものがある。
将之の口淫でちょっとでも気を緩めると、理性を手放して、一気に爆ぜそうだった。腰に溜まった快楽が体内でマグマのようにうねって出口を求めて押し寄せてくる。それに懸命に抗った。
我慢していると、腰や太腿がヒクヒクと切なげに揺れた。
それに気付いた将之は、太腿の内側をいたずらに緩く撫で始めた。
太腿から膝まで、膝から太腿までを執拗に往復されると、こそばゆいような甘い感覚が湧く。
どうしようもなく
「ゃ……、も、ぉ、口……離し、て……っ」
上ずった声で知己が制止するが、お構いなしに将之は意地悪なタッチを続けた。
数分後、我慢大会を制したのは、なんと知己の方だった。
かなりの状態のはずなのに、必死にセーブし一向に達しようとしない知己を将之はようやく口から解放した。
口に伝う唾液を、ぐいと手の甲で拭いとり
「僕、下手になりました?」
と将之は不躾に尋ねた。
妙に色っぽい将之の仕草に目を奪われて
「……?」
言われた意味がすぐに分からずにいる。すると、
「なかなかイってくれないので」
と将之はかなり不満そうに説明した。
「先輩、これをすると必ず気持ちよさそうに達していたんですよ」
「は……?」
とんでもない発言が飛び出した。
だが瞬時に
(……そうだろうな)
とは思う。
だけど
(無理だ)
とも思う。
「……あんたの口の中は無理だ」
とても正面切っては言えない。そっぽ向いてぼそぼそと子供のいいわけのように知己が呟くと、将之の眉がきゅっと吊り上がった。
(家永さんとそういうことをいっぱいしたから、免疫ができているってわけか)
だが、ここで「家永」の名前は出したくなかった。
昨日、将之がひっかけて知己はものの見事に暴露してしまった。
どんな方法でそこに至ったのかは分からないが、家永相手だと知己は達したのだ。
ここで家永の名前を出すと、家永に負けた気がした。
(本当に……居ても居なくても、何をしてもしなくてもムカつく人だな)
将之は忌々しく思った。
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