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「じゃあ、口の中じゃなきゃいいんだ」
知己をぐいと引っぱって前かがみに倒す。
湯に顔を突っ込みそうになって慌てて知己は手をバスタブの縁に捕まった。
背を反らせて体をつっぱると、無防備にも後ろを突き出す姿勢になった。
「いきなり、何……?」
思わずとった姿勢の恥ずかしさに知己が狼狽え、背後の将之に問いただす。
「これも好きだったじゃないですか」
(え? まさか、こんな……?)
「こうしてよく自分から晒け出して『早く欲しい』って、ねだっていましたよ(超大嘘)」
将之は不審がる知己の背に覆いかぶさり、重なるように抱きついた。
(うわ……!)
直接ぴったり触れ合う肌の温かさは、さっき膝の上に座った時と比べ物にならないほど心地よかった。だが、耳元で聞かされる信じられないような赤裸々な話に
「嘘だろ……?」
知己は信じたくなくて、呆然と呟いた。
(あれ? さすがに嘘ってバレた?)
一瞬将之は調子に乗り過ぎたかと思ったが、間近でみる知己の顔はいまだ半信半疑のようだ。
(いや。まだイけるな)
と将之は判断した。
背中に感じていた将之の温かさがふっとなくなり、後ろに移動したと思われた。
(や……、嘘、見られてる?)
およそ人に……というか自分でも見られない箇所に不躾な視線を感じて、たじろいだ。
(……いや、落ち着け、俺。以前の俺はこんな凄いことだって中位さんにならOKだったくらいの関係だった訳だし、それって嬉しいことだろ? 超絶恥ずかしいがこれが当たり前だったんだし、こんなことでいちいち騒いだら中位さんにうんざりされてしまうし……)
そうでなくても度々「これは当たり前だった」「好きだった」と言われているのだ。
(拒否しちゃダメだ)
思わず、そこにきゅっと力を込める。
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