★中位将之という人物 8

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「あ、は……っ……、ぉ、お願いだ、一緒に……」 「やせ我慢を。もうこんなになっているくせに」 「だ、ダメだっ」 「いいんですよ、遠慮せずに」 「違う……っ」 「違いません。どうぞお先に。……僕は先輩がイった後に好きなタイミングでさせてもらいますから」 「ぃ、ぁ……、んぅ」  激しくなった抽送に、知己の腰がつられて動いていた。  確かに限界は近い。  ……だけど。 「だけど、こんなのは嫌だって言っているだろ? いつも!」  腹の底から知己が叫んだら、将之も 「ちょっ、……それ、ダメぇっ!」  と似たような叫び声を上げていた。  将之の激しい動きも息もピタリと止まった。 「?」  知己が訝しんでいると、ブルブルと小刻みに震えた将之が 「……………………あっ……ぶなー」  と絞り出すように言った。 「そんなに急に締めたら、ダメですよ? 危うく、もっていかれるところでした」 「俺が悪いのかよ?!」 「わあ! ちょ、まだ力入れちゃダメですってば!」  気を緩めたら、まだ危険なのだろう。  叫んだ弾みで知己は腹筋にも後ろにも力が入ってしまったらしい。 「って、え? あれ? そう言えば先輩……、さっき『いつも』って言った?」 「…………言った」  背後の将之の方に顔を向け、だが恥ずかしくて視線を合わせられない知己が言う。 「え? じゃ、もしかして?」  将之の口が緩く開くが、信じられない思いからか、次の言葉がなかなか出てこなかった。 「……………………思い出した」  それ以上言わない将之の代わりに、知己がぼそぼそと小声で言う。 「……俺、いつも言ってたよな。後ろからは嫌だって」 「……」 「寂しいから、顔は見える方がいい。それに、俺ばっかりは嫌だって。一緒に……が、いいって」 「……」  ぽかんと開いていた将之の口が閉じ、緩く口角が上がっていく。  うっすらと目を細め、将之は嬉しそうに微笑んでいた。 「……将之……」  恥ずかしさから彷徨わせていた知己の視線さえも釘付けになるような笑顔に、きゅうっと心臓を掴まれたかのような感覚を知己は覚えた。  ただその後に 「……嬉しい……」  と呟いた途端、魅惑的な微笑み浮かべた将之が 「先輩、大好きです!」  の言葉を皮切りに暴走機関車と化した。 「あ、ばか! ちょ、待て! ゃ、待てってば……!」  慌てふためく知己の様子など目に入らない。 「うぁぁぁ! ゃ、ま……待て、待ってば……っ、あ、あぁ! 将之ぃ……」  トンデモナイ律動で、知己の制止も振り切って、一気に高みに押し上げてしまっていた。
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