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中位将之という人物 9
知己はバスローブに身を包み、まるで行き倒れたかのようにベッドでうつ伏せになって眠っていた。
(あれ……、俺、寝てた?)
ようやく目を覚ましたが、すぐには起き上がれずに目だけをきょろきょろと動かす。
(あ。良かった。ここ、将之の部屋だ)
先ほどのことが夢ではなかったと分かり、安心して再び目を閉じた。
体を動かすのがなんとも億劫だ。
部屋に差し込む陽の明るさから、まだかろうじて午前だろう。
寝ていたのは数分程度……かな。
「……っ……!」
突然、この姿勢で眠る危険性を感じて、慌てて飛び起きて後ろを押さえた。だが、勢いよく起きた反動で酷使した腰が悲鳴を上げる。
「いっ、たたた……」
知己は、またもやベッドマットにボフンと沈んだ。
「心配しなくても大丈夫ですよ。
睡姦もいつかはしたいけど、今日じゃなくていいですから」
声のした方に、目だけを向ける。
(「いつか」って言った……!)
やたらとスッキリとした顔して将之は、部屋の冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出した。
「とりあえず、今は満足。お腹いっぱいの賢者タイムです」
よく喋る賢者様だと知己は呆れた。
「あ、でも……。
まだ先輩がお望みなら、喜んでお付き合いしますよ」
オーシャンビューの大きな窓の傍の椅子に座って、将之は喉を鳴らして水を飲んだ。
「……あれだけやっといて、何を言うか」
知己は腰の痛みに耐えながらうつぶせのまま言うと
「エッチな先輩がいけないんです。お尻突き出して『もっと』とか言うし、何度いっても満足しないで腰振ってるし」
どんなフィルターかけたら、あれがそう見えるのか。
「そんなこと、してない。都合よく解釈するな」
「まあ、先輩も僕とするのは久しぶりだったから、気持ちは分からなくもありませんが」
(嫌味だな)
あの後も、散々穿たれた知己は最終的には将之の腕の中で崩れるようにして意識を手放した。
それで将之が抱えてベッドまで運んだのだ。
「ちゃんとバスローブ着せて、偉いでしょ?」
とても褒める気にはなれない。
「その前に、嘘ついて色々やらかしているからプラマイマイナスだ」
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