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「あれ? どこから嘘って分かったんですか?」
将之が意外そうに言う。
「……あの時は分からなかったけど、今、考えたら嘘だったんだなと分かる」
「へえ」
ただでさえ鈍い知己だ。
よほどのことがない限りバレないと高を括っていた。
「かなり頭痛は軽くなったんだけど、あの時、お前が本当のこと話すと頭が痛んだ。逆に嘘だと何ともなかった」
「頭痛が判断基準なんですね。生きたウソ発見器だ」
「褒めてない、それ」
しかも、もう分からない。
記憶の引き出しはスムーズに開くようになった。
そろそろとベッドから体を起こそうと知己は動いたが
「うー……」
と唸って、また動かなくなった。
「生きたウソ発見器というより、イモムシって感じですね」
「俺をこんなにした張本人が言うか……」
深々と最奥まで突きまわされたら、誰だってこうなるだろう。
「先輩の戸惑いながらも何でも応じてくれるのが可愛くて、つい。やめられませんでした」
全く悪びれずに言う将之に反省の色はない。
「思えば僕は、先輩の処女を2度も頂いちゃったんですね」
反省どころか赤裸々に感想まで語る将之と鈍痛訴える腰に
「……」
知己は怒る気力なく口をつぐんだ。
空いたペットボトルをゴミ箱に入れると、将之は
「先輩も何か飲みます?」
と尋ねた。
「いや。今はいい」
まだ起き上がれそうにない。
横たわったままではうまく飲めそうにないし、そう言うと将之が「口移しで飲ませますよ」と言い出しかねないので、断った。
将之はゆっくりと傍までやってきて、知己の横たわるベッドに腰掛けた。
「本当に記憶戻ったんですね」
と嬉しそうに微笑む。
(腰、冷えるかな)
冷房の効いた部屋で心配になった将之が、薄手の掛け布団を知己に被せると、体が冷えた知己は両端をもぞもぞと掴んで丸まった。
「……多分、戻ったと思う」
ますますイモムシと化した知己が、いまいち自信なさげに答える。
「僕としては、もう少しなくしてくれてた方が都合よかったんですが」
将之は、知己が記憶ないうちにやっておきたいことがあったらしい。
「あれだけやっといて、まだしたいことあったのか」
呆れて言うと
「先輩は玩具が好きとかハメ撮りが好きとか目隠しプレイが好きとかエッチな下着が好きとか……色々好きだったことをお教えしようと思ってたんですが」
知己の予想をはるかに上回る返事だった。
「……記憶戻って、本当に良かった」
と知己は心底思った。
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