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「でも、何なんです? 先生、卑怯じゃないですか? 分からないからって最後は大声で怒鳴りつけてゲームを強制的に終わらせようだなんて」
(いや、卑怯なの、お前らの方だよね?)
多勢に無勢で、しかも意味の分からない嫌がらせゲームを行い、職員室にまで見張らせるようなことをしておいて、よく言う。
「大体、教師はそうですよね。普段は『ルールを守れ』『規則を守れ』というくせに、都合悪くなると途端に自分のいいようにルールを変える」
「そんなことをしたつもりはない」
耐えきらずに知己が言うと
「今、現在、そうしたじゃないですか」
敦もすかさず応戦する。
「なあ、みんな?」
そして、自分に味方を付けようと、生徒たちの同意を煽った。
これまでになかった教師の行動に生徒たちが戸惑いながらも、敦の言うことに数名同意し、パラパラと頷いてみせると他の者もそれに倣った。
「それこそ、お前達の都合だろ?」
「はあ? どういう意味ですか?」
惚けた様子の敦。小柄だが、堂々としていて異常なまでに威圧感を与えてくる。
(なんだろ? この威圧感)
敦の威圧感がどこからくるものか考えつく前に、知己は答えていた。
「ゲームもルールもお前達の都合。教師を巻き込んでいるだけだ。そもそも授業中にすることじゃないだろ? なんでこんなことをしたんだ?」
「面白くないからです」
「何が?」
「授業に決まっている」
吐き捨てるように言う。
「小難しいことをブツブツと一方的に話して。『分からない』と正直に答えれば『こんなことも分からないのか?』みたいな。あんたらの俺達を見下したような顔、見飽きてんですよ」
「そんなことをしたつもりはない」
「したんだよ!」
少年の顔に似合わぬ恫喝だった。
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