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すると今度は
「本当、夏休み中に戻って良かったですよ。あんな状態で八旗高校になんて行かせられませんから」
さっきとは真逆のことを将之は言い始めた。
「今の学校は危険がいっぱいです。あんなおぼこい先輩、性的にどんな目に遭わされるか」
「性的に、言うな」
呆れてツッコむ知己を無視し、将之は語る。
「まずラノさん大好きで不純同性交遊のイケナイ妄想をして赤点回避するDKでしょ? それに口八丁手八丁DKも居るし、……あ、あいつも! 爽やかイケメンを装って実は虎視眈々と先輩狙っている金髪野郎。あいつ、妙に慣れてますからね。チョロい先輩なんてあっという間に手練手管で陥落ですよ」
「チョロい、言うな」
とりあえず一回突っ込んだ後で、知己は
「……もしかして、俊也と章とクロードのことか?」
と将之に尋ねた。
「おお、全問正解。本当に記憶戻っていますね。安心しました」
さっきのはテストだったらしい。
「章なら、大丈夫。あいつ、敦のことが好きだから俺にそんなことしないぞ」
「甘い。章君だからですよ。あの用意周到な子は、先輩を練習台にするかもしれないじゃないですか」
一瞬
(やりそう……)
と知己も思った。
「俊也に関しては……そうか。そんなことで赤点クリアしてたのか、あいつ。忠告感謝する」
思ってたよりも、すんなりと受け入れたが
「あ。だけどクロードは、頼りになるいい奴だぞ」
とクロードだけは弁護した。
「騙されてますねー。あの人、まだ絶対に諦めていませんよ。隙あらばあなたに何かしようとしている顔です」
「んー……考え過ぎだと思うけどな。いつも言っているが『夫思うほど、妻モテず』だぞ」
そう言うとイモムシ知己は、ころんと横に寝がえり、将之の方に体を向けた。
「ん? 妻……?」
何か引っかかる。
「あ」
将之の方にも心当たりがあるようだ。
「なんだっけ。何か『妻』に引っかかる気がするんだが……」
「あー、ソレ。無理に思い出さない方がいいですよ。家永さんが言ってましたから。無理に思い出すのは危険だと」
将之は都合よく家永の話を持ち出した。
「お前、確か入院中の俺に嫁さんの話をしたよな……」
「……思い出さなくていいのに」
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