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「新年」
「あけまして」
「おめでとー!」
のかけ声と共に
「「「かんぱーい!」」」
カチーンと三つのガラスコップが合わされた。
梅ノ木グループ会長の自宅の一角に集い、コーラで新年祝う三人の男子高校生が居た。
冬休み直前に、梅木敦が
「年越しを、うちでしないか?」
と誘ったのだ。
グループ会長三男坊の誘いに、俊也の家族は「行ってこい」ともろ手を挙げて送り出した。章に至っては、家族ぐるみで付き合いあるお隣の幼馴染である。反対材料などない。
「いよいよ今年は卒業だね」
「新年はめでたいが、そう思うと寂しいな。十中八九、俺らの進路はバラバラになっちまうだろ」
「多分、な」
「仕方ないよ。敦ちゃんは経済学部じゃないとダメだと言われてたんだし、僕は法学部に進むし……」
章と敦は私立AO受験で合格し、既に進路は決定していた。
「あれだけ態度悪くて、学校推薦もらうか?」
「結局は章の計画通りだったな」
「言ったでしょ? それなりに出席日数稼いで成績良かったら絶対に推薦もらえるって」
敦は認めないが、それもこれも知己のおかげだ。
章はともかく敦は出席日数爆上がりで、それにつれて成績も上がった。
推薦には申し分ない生徒となった。
「打算的だなぁ」
と感心する俊也に、章は
「やめてよ、人聞き悪い。『狡猾』と言って」
と、すみやかな訂正を求めた。
それを聞いて敦は
(意味合い、悪くなってないか?)
と思った。
「良かったな。お前ら。去年のうちに進路決まって」
「うん。安心は安心。ごめんね、僕らだけ」
「まあ、俺はあれだけの成績だ。推薦もらえるとは思ってなかったから、潔くセンター受験するよ」
「俊也、国公立狙い?」
敦が意外そうな声を出す。
「いや、私立大もセンター試験の点数見て合否決めるとこ多いから、受けるにこしたことない」
「そんなもんなのか?」
「敦ちゃん。感心なさすぎだよー!」
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