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「あんたらがそうしてきたから、
『勝手にしゃべったらいいじゃないか』
『俺達を無視して授業したらいいじゃないか』
と思って、退屈しのぎにゲームを始めたんだよ! なんか悪ィかよ?!」
16歳の少年はマスクを外し、怒りを吐き出していた。奇しくも先ほどの知己と同じように。
「……」
なんだか胸が痛い。
この二か月ほど虚しい思いをしてきたが、目の前のこの少年……いや、少年たちは入学してからずっとこんな思いをしてきたんだろうか。もしかしたらもっと前から、かもしれない。
やるせない思いが、知己の胸をしめる。
八旗高校に通う生徒は、中学校まで勉強が苦手な成績下位の生徒が集まっている。多かれ少なかれそういう経験をしてきている。教師だけではなく、成績の良い生徒たちからも、そんな目に遭わされてきたんだろう。
「でも……俺は」
やっと知己が言葉を絞り出した。
「お前たちを軽んじたつもりも、無視したつもりもない」
「何をいまさら……。言い訳としか思えないけど」
取り付く島もない。
敦の完全拒否の態度に、知己はそうせざるを得ないこれまでを勝手に想像して、顔を曇らせた。
(ほぼ全校生徒が加担しているってことは、これは梅木敦一人の考えじゃないってことだよな)
これまで敦の言うように「俺達を無視して授業」されたんだろう。
だったらこちらからも「無視して」やる。
この頑なな姿勢が、物語っていた。
「あんたの授業は面白くない。勝手にやってろ! なあ、みんな」
そう言って、敦は先ほどと同じように見渡した。
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