共通試験にて

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「そんなグダグダな大人の関係もってる先生に相談なんだけど」  酷い肩書をつけられた。とても今から相談する相手にいう言葉ではない。  だが、章だから仕方ないと知己は諦めつつも、 「……グダグダじゃない」  と、ささやかな抵抗を試みた。 「あんな夜にお風呂誘われる関係でしょ? どう考えてもグダグダじゃない」 「……うっ!」  あっさり玉砕。 (だから章には知られちゃダメだったのに……、将之めぇ!)  章からの電話にヤキモチ妬いた将之は、わざと知己を風呂に呼んだのだ。 「グダグダが嫌だったら、グズグズ? ドロドロ? ズプズプ? それとも……」  嫌な擬態語の羅列が続く。 「もう、グダグダでいい」  この話題は長引かせない方がいいと判断した知己は、一番まともそうな「グダグダ」で手を打った。  時既に遅く、すっかり過ごしていた知己に 「どっちがどっちの(おうち)に行ったの? それって家族公認? それとも『今日、うちの家族誰も居ないんだ』的な展開? もしかしたらホテル?」  興味津々に尋ねてくる。  わずかにコーヒー皿の上に生き残った豆菓子を摘まみ (これは、とても同居しているとは言えないな……)  と知己が最重要機密(トップシークレット)認定していたら 「いずれにしろ、ヤることヤったんでしょ?」  と、えげつない最終質問が繰り出された。  ぽとり。  思わず知己は豆菓子を落とした。 「ああ! もう、さっきから何やってんのー! 食べ物粗末にしちゃダメだよ」  ずいぶん数が減ってしまった貴重な豆菓子を落としてしまったので、章が呆れている。  やはりどこか臭漂う叱責だ。 「……お前、何、言って……」  ギギギと油の切れた機械の動きで、知己が言うと 「あ、何? その顔は、『つい最近まで精通なかった人間の言うことじゃない』って顔?  言っとくけどゴリゴリの童貞が、ずっぷずぷのエッチでエモい作品を作るってことも多々あるんだからね(※)」 「……いや、どんな人間だろうとそんなことを気軽にこんなとこで話すんじゃない」  というか、 (どんな作品観ているんだ、こいつ)  と知己は思った。 「つまりはね、僕の相談はそれなのよ」 「どれなんだよ?」  もはや回り道過ぎて、分からない。 (※)私調べの無根拠なデータです。
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