240人が本棚に入れています
本棚に追加
知己はここまでの赤裸々な猥談から推察されて
「いっておくが、乗れる相談と乗れない相談があるぞ」
と、あらかじめ釘を刺した。
「乗れない相談って?」
「18歳未満禁止みたいな……」
「ああ……!」
章もピンときたようだ。
「別に今更、男同士のヤり方なんか聞かないよ。知ってる」
(……まあ、夢精までするのなら、やり方は分かっているか)
「それにそんなことを『大好き』くらいで照れる三十路男に聞くまでもない。どうせ、ふわっとしか教えてくれないでしょうし」
「いちいち腹の立つ言い方を」
と知己は言った。
「じゃ、何の相談だ?」
「僕が知りたいのは、それに至るまでのシチュエ―ションだよ」
「……」
もはや、落とす豆もなくなった。
「何をどうしたら、そんなことに及べるシチュにもっていけるの?」
「……はあ」
「『はあ』じゃない! 気の抜けた相槌打ってないで、真剣に聞いてよ。こっちは毎晩『蛇の生殺し』状態なんだからね」
「どういうことだ?」
「僕が大人になって以来、困ったことに2日に1度のペースで、敦ちゃんが夢枕に立つんだ」
(2日に1度なら、毎晩じゃねえじゃないか)
と思ったが、そこはあえてスルーした。
(夢枕に立つ……)
何やら敦が生霊でも飛ばしているかのような、ホラーっぽい話にもなってきた。
「なんか怖いな」
正直に感想を言うと
「なんで? 怖くないよ。だって敦ちゃんだもん。敦ちゃんなんて、可愛いもんでしょ?」
と章が言う。
愛情表現の一環なのだろうが、章の気持ちを知らない人間が聞いたら間違いなく誤解する。
(敦が聞いたら、憤死しそうだ……)
と知己は思った。
そうかと思ったら
「夢の出現率がスライム並みに爆上がり」
今度は雑魚モンスター扱い。
「はあ」
やはり「はあ」しか出てこない。
(章に好かれるって、かなり難儀なことなんだな)
と知己はしみじみと思った。
最初のコメントを投稿しよう!