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「まず、敦の気持ちを確認しろ」
「えー……面倒だなぁ」
「じゃないと、確実に嫌われコースじゃないか。その……不純同性交遊を勧める訳じゃないけど、そういうことはお互い合意の元にしなくちゃ」
「『僕のセフレになって』っていうの?」
「なぜ、そっちに行く」
知己が呆れた。
「俺が言いたいのは……」
「分かってる。その前に告白しろって言うんでしょ?」
これまでの回り道とは打って変わってのダイレクトな言い方に、知己が「え?」と勢いをそがれた。
「お前、分かってんなら……」
すかさず付け加えた知己の言葉を
「嫌だよ」
と、やはり章はたたっ斬る。
「告白して、『無理だ。俺はお前のことを幼馴染としか見られない』とか言われてみてよ。僕らのこれまで築いためっちゃ仲良しーな関係は終了なんだよ」
(確かに仲は良かったように見えたが……)
めっちゃ仲良しーな雰囲気ではなかった気がするが。あれが章にとってめっちゃ仲良しー感覚なのだろうか。少し敦が気の毒に思えた。
「あの妙にくそ真面目な敦ちゃんのことだよ。変に意識されて、告白以降避けられるかもしれないじゃない。そうなったら最悪だよ。結婚式に呼んでくれないかもしれないじゃないか」
(あくまでも結婚式の招待に拘っているのか?)
これまでの妄想ダラダラな雰囲気が一変して、永久凍土もかくやなブリザードが吹いた気がした。
「もしかして、敦ちゃんも『俺も章のことが好き』なハピエンでも夢描いてた? 先生の脳内、どんだけ平和なの? お花畑なの? これだから教師は……。学校で道徳ばかり教えてたら、そーんな能天気な頭になるの?」
(いや、俺が教えているのは生物なんだけど……)
とは、とても口を挟めない状況だ。
「よく道徳で『人を信じろ』とか『人に親切にしろ』とかっていうじゃない? でも実際にそうしたら誘拐犯の『お母さんが入院した。それで頼まれて君を迎えに来ている』『道が分からないんだ。案内してくれる?』で車に乗っちゃうよね。実際には人をやみくもに信用しちゃダメだし、親切にするのは自分の信用できる人間限定に……なんだから」
ついでに道徳教育の批判も入った。
多分、教育コメンテーターとして活躍する母親の辛口批判の影響だろう。
「ボーっと生きてんじゃないよ!」
最後は、ショウちゃんに叱られた。
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