自由登校なのに 1

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 章も敦も進路は決まっている。  当然、登校して来ない。  しかも敦に至っては、 「ただでさえこんな所来たくないのに、来なくていいって言うんなら来るはずないだろ」  とまで言っていた。  俊也が言うには 「あいつら、家が隣同士だからな。毎日、どっちかの部屋に入りびたっているみたいだぜ」  だった。 (……よく考えたら、章の奴。少なくともこの二週間は、家の人はみんな留守の状況で敦と二人きりじゃねえか。  なんで、俺にあんな相談してきたんだろ?) 「先生。敦から質問」  そして、今日は敦からの質問だ。  一体、何だろう。 「なんだ?」 「『章、学校に来てないか?』だって」 「知らん」 「今日、家に行っても居ないんだって。俺も会ってないしな。  じゃあ、あいつ、どこに行ったんだろ?」 「……」  昨日のこともあって、なんだか気持ちが落ち着かない。 「一応、学校の中を探してみるか」  と知己が小さく呟くと、 「俺も」  妙に俊也が嬉しそうに言う。 「学校に居るか居ないかも分からないのに、受験前の貴重な時間を使うな。俊也は勉強しろ」 「何言ってんだ? 俺にとっちゃ先生と一緒に過ごす時間が一番貴重! しかも二人っきりで、美味しいことこの上ない。それに章は親友だ。親友が居なくなって、心配に決まっているだろ?」 「お前……」  全てが本音全開の俊也だったが、 (「それに」以降の後半の部分を先に聞きたかった……)  美しい友情っぽい言葉が、言う順番を間違えている。  欲望の先行にすべてが台無しになっていた。 「絶対についてくるなよ!」  知己が釘をさす。 「ダチョウクラブだな!?」 「違う!」 「それでも、ついて行ったら?」  このタイミングで、俊也が間抜けな質問をする。 (早く探しに行きたいのに!)  焦る知己には、 「……怒る!」  しか思いつかなかった。 「お……?」  なんとも幼稚な対応だったが、俊也には効果があったようだ。 「……お、おとなしくここで待ってる」  さっきの勢いが消え、しおしおと引き下がった。 (……今までに居なかったタイプだ)  将之も門脇も、なんだったら章も敦も「待て」と言って素直に待つタイプではない。
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