自由登校なのに 1

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「その代わり、見つけたらすぐに教えてくれよ」  多分、章のことは本当に心配なのだろう。 「分かった」  返事をして、知己はすぐに探しに行こうとした。 (いや、待てよ)  教室のドアに手をかけた所で、ピタリと知己は止まった。  嫌な予感が湧く。 (殊勝なふりして、こいつらが教室抜け出すなんてチョイチョイあったじゃねえか?) 「そんなこと言って、俺を騙す気だな?」 「んなこと、しねえ! 早く、章を探してくれってば」 「本当か?」  散々騙されて二年間近くを過ごした知己は、簡単に納得できなかった。 「えぇい、疑り深いな! この俺の目を見ろ。これが嘘を吐いているヤツの目か?」  俊也は真実を語る者のテンプレート化したセリフを言っているが、なぜか目をぎゅうっと閉じている。 「……なぜ、目を閉じてんだ?」 「せ、……先生のちょいおこな可愛い顔を、こんな間近で見れない。俺が」  頬染めて言われて、知己は嫌な気持ちしかしない。  これがいつもの理科室だったら、間違いなくひっぱたいていただろう。  二人の居た場所が、まだ3年3組の教室だったということ、他に生徒が9名居たことが幸いし、知己は理性を取り戻した。  反射で振り上げた右手を、知己は断腸の思いでなんとか下ろした。 (もう、いい!)  俊也のことは放っておこう。  今、優先すべきは章のことだ。 「こっそり追いかけて来たら、めちゃくちゃ怒るからな」  念のため、更に幼稚な脅しを一つ追加し、「え……? いや、まじ? それは困る、な」と怯む俊也をおいて、知己は教室を後にした。
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