自由登校なのに 2

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「どうしても僕は敦ちゃんが絡むと冷静でいられないみたいで……、あの好きな人あてっこの時もそうだった。絶対に先生ごとき、簡単にごまかし通せると思ってたのに、全然だめだった」  自己防衛なのか、やたらと喋る。 「今も、そう。こんな感じだけど、めっちゃテンパってる。真摯に向き合っているように見せかけて実は三十路の狡猾老獪な先生とうまく取引できるか、不安になってる」  挙句、ディスることに余念がない。 「取引、言うな」 「じゃあ、駆け引き」  どっちにしろ、人聞きのいい言葉とは思えない。  時間は有限だ。  モタモタしていたら、1時間目が終わって俊也がここに来るだろう。  溜息を一つ吐き出して、知己は 「章は、俺に一体何をさせたいんだ?」  と単刀直入に聞いてみた。 「敦ちゃんをこっぴどく振ってほしい」 「はあ?!」 「丁重に男割り……じゃない、それはダメ、絶対」 「何、言ってんだ? 章」 「だから、丁重にお断りして!」 「……俺は、告白もされてないのだが?」  知己が首を傾げると 「だって、将之さんも言ってたじゃない。敦ちゃんも先生のことが好きなんだって」 「あ……」  そう言われて、春先の敦・自殺騒ぎを思い出した。 「言っておくが、そもそも将之の考え方はおかしいんだぞ。真に受けるな。あいつは……言いたかないが、俺達の高校時代のことがあって、すべてのベクトルが俺に向いていると勘違いしているんだ」 「おかしくないよ。実際に、敦ちゃんも俊ちゃんも蓮様も将之さんだって先生にベクトル向いているじゃない。  敦ちゃんも懐いているし、将之さんはめっちゃ頼りになる頭いい人だと思うよ」 (将之の奴……。敦ばかりか章まで手懐けていたとは)  あの電話で、すっかり章は将之を信じ切っている。 「だーかーら! それはもう逆恨みされるくらいの酷い振り方をして!」 「やめろ。そんなこと、俺にはできない」  人としてどうかと思い、至極真面目に断ったつもりだったが 「……確かに梅ノ木グループの力を使って、先生に酷い仕返ししそうだけど」  敦の仕返しを恐れての幼稚な拒絶に受け取られた。 「そこは一つ、僕の未来のために」  他力本願が過ぎる。 「そして傷心の敦ちゃんを僕が慰めて、4月1日にゲットする。最高の作戦!」  その上、自己中も過ぎた。
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