自由登校なのに 2

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(そういえば、一昨日……)  毎日、蛇の生殺し状態だと言ってた章の話を思い出した。 (なるほど、このことか)  と知己はやっと得心した。 「平日の昼間なんだから大体毎日のことなんだけど『今日、家族がみんな居ないんだ』とか言ってくるし、この間なんかお隣さんだから当然なのに 『幼稚園から高校までずっと一緒だったんだぞ。今更、別々の学校に行くなんて考えられない。なんで章は大学を俺に合わせてくれなかったんだ?』  って言い出して 『章と離れるなんて嫌。4月なんか来ない方がいい。俺、お前とずっとこうしていたい』  って泣きそうな顔するの。あざといよね?」 「いや、章……それ、あざといというか……」  一歩間違えば、ずっとこたつでゲームしていたいというニート発言にも受け取れるが、これは (告白したら、恋人当確なのでは?)  と鈍い知己でも思った。  それなのに、あの人間観察に長けた章が、なぜにこうも二の足を踏むのかが分からない。  どう言おうかとまごまごしていると、章が知己に構わず話を続けた。 「指を絡めながら、敦ちゃんが言うんだ。 『お前のことだから、俺と離れてもすぐに作っちゃうんだろうけど……俺達、ずーっとだよな?  離れても、疎遠になるなよ。毎日、夜にはメールくれ。一日何があったかとか何食べたとか、何でもいいから教えてほしい。時間なかったら”元気”だけでもいい。俺の知らないとこで章が生活しているなんて、考えられないんだ』  って」 (敦ーーーーーっ……!)  確かに、こうも「友達」を連呼されれば、さすがの章も二の足を踏んでしまう。こたつで敦が何か言う度に前のめりになっては、「友達」を強調され、何事もなかったかのようにしゅっと元の姿勢に戻る章が見えた気がした。 「それから、指の間に指を通してぎゅうっと握り込んだかと思ったら 『……やっぱり嫌だ。章。俺よりも仲いいなんか、絶対に作るなよ! 俺よりも章のことが分かるヤツなんかできたら、許さん。梅ノ木グループ総力上げて、そいつを潰してやる!』  って、うるうるな目で僕を見ながら、暗黒発言するんだよー! あざと可愛いよね?」 (あ、敦ーーーーーっ……!)  知己は二度目の叫びを心の中であげた。  言ったら100倍の文句が返ってきそうだが、親の経済力を当てにする発言は萎えるからやめろと言いたくなった。
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