ゲーム 開始 7

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 今度は知己に向き直り、章は 「先生も授業を進めないといけないでしょ。これ以上、僕らの話に時間取る訳にはいかないですよねぇ?」  穏やかな口調と違い、鋭い眼光は否定を許さない。 (込み入った話……)  多分、敦にみんなの前で喋らせたくないのだなという章の考えを、さすがに知己も感づいた。 「あ、あぁ。そうだな」  理科室内は、戸惑いで少しざわついていたが知己は気にせずに 「じゃあ、授業再開……」  と、黒板に向かった。  その背後で、 「……っ!」  何か声が聞こえた気がした。 「……っ! ……章のぉっ、馬ぁ……鹿ぁー……っ!」 (え? 章? 俺じゃなく?)  知己は驚いて振り返り、章と敦を交互に見る。  章は相変わらずのほほんと敦を眺めているだけ。対照的に、敦は立ち尽くし、爪がめり込むほど拳を握りしめていた。  メガネのレンズに涙が溜まったのであろう。敦は分厚いメガネを机に投げ捨て、理科室中どころか廊下にまで響くような大声で 「なんなんだよ、章! ばーか! ばーか!」  今時小学生でも言わないような、聞くに堪えない幼稚な悪口を連呼している。 「……(梅木敦って)」  驚くべきは敦の容貌だ。 (こんな顔だったのか……)  涙で目が潤んでいたのもあるだろうが、それを差し引いても煌く瞳は長いまつ毛に縁どられ、やや厚めの唇は不満げに尖っている。柳眉を顰め、章を憎らし気に睨むが、なんとも愛らしい。  そこに居たのは、壮絶なる美少年だった。  言っていることと顔のギャップがあり過ぎて、見とれるかのように知己は呆然と眺めていたが、敦の方は収まりがつかない。 「もう、章なんか知らない!」  陳腐な捨てセリフと共に、理科室を飛び出してしまった。  その華奢な後ろ姿に 「お、おい! 梅木……!」  慌てて知己は追いかけようと声をかけた。 【挿絵を上げてみました。】 https://estar.jp/novels/25306033/viewer?page=324
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