自由登校なのに 3

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「聞かないっ!」  そう言うと敦は自分の耳を押さえ「聞かない」の定番のスタイルをとった。 「一体、俺に何の話をする気だ?! 絶対にお前の話なんか聞かないからな!」 (今まで立ち聞きしていて、それかよ……)  と知己が思っていると、それが顔に出ていたのだろう。章が知己に「敦ちゃんだもの」と詩的にさらりと答えた。 「ずぇぇったいに聞かないぞぉ!」  それにしても、照れているにしては異常なほど頑な態度だ。 (……何かおかしい)  どちらかというと直情型で分かりやすい敦なのに、いつもとは違う感情の読めなさっぷり。  取り付く島もなく、知己と章がたたずんでいると 「何が、『僕ら、両想いかな?』だ。リア充爆発しろー!」  敦の方が先に爆発したようだ。 「「は?」」  突然の発言に、知己も章も同時に声を上げた。 「何が、『一歩を踏み出せ』だ。何が『物理的に踏み出すな』だ。自分から誘っておきながら何言ってんだ。人が来ないと思って、こんな所でいちゃついてんじゃねえよ!  そんでもって何が……、だ、だ……」  真っ赤になって言いよどむ敦に、章が 「だ、だ……? ウルトラマンの怪獣かな?」  と思いつくままにぶっこんでしまった。 「ヴァーカ!」  章の脈絡ない推察を皮切りに、敦がエンジントラブルが直った車のようにまた罵り始めた。 「何が、『大好き』だ!? ヴァーカ! ヴァーカ! ヴァーカ!」  なんとも既視感ある言葉を連呼する。  察するに、この『ヴァーカ!』という変なネィティブ感ある発音は、章と敦の間での流行の言い方なのだと思われた。 「……あの、敦ちゃん?」  章が爆発続ける敦の真意を問いたくて、とりあえず止めてみたがそんなことで敦は止まらなかった。 「以前にも言ったはずだ。俺はお前の好きな奴は大嫌いだと」  近眼の分厚いレンズの奥、美少女の瞳で射殺す勢いで敦は知己を睨んだ。 「……えーっと?」  未だに事態を把握しきれず戸惑う章に、 (なぜ、これで敦は俺を好きだと思うんだろうな。章は……)  と知己は思った。
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