自由登校なのに 3

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「よほどいいものなんだな」  という知己に、章は 「ただのDVDだよ」  と答える。 (ああ、章は映画好きだからな。俊也が好きそうなのを探したのか)  知己が納得していると、俊也が 「先生も気が向いたら何かくれ。俺の誕プレは365日受け付けているからいつでも大丈夫」  と遠回りな催促をした。 (それは、もはや誕生日プレゼントと言わないのでは……?)  と思ったが、知己は 「気が向いたらな」  と適当に返事した。 「ものじゃなくてもいいぞ」 「?」 「先生の心とか、体とか……そういう(たぐい)のでも」  章からもらったプレゼントの上に、なぜか猛烈な勢いで「の」の字を書き出した俊也に (何か言ってる……)  と知己は呆れた。すると、隣から 「それは、絶対に気が向かないと思うな」  代わりに章が返事をした。  俊也が袋の上から加減もせずにひたすら「の」の字を書いたため、適当に封していたシールが剥がれ、そこからするんっと中身が飛び出した。 「あっ! ヴァカ俊!」 「なっ?!」  すとーんと理科室の床に落ちて、俊也は 「しまった!」  と慌てた。  中身は確かにDVDだった。  しかし、がっつり書かれている文字は「R18」。  パッケージの女性のきわどい下着姿に、上目遣いで蠱惑的な微笑みを浮かべている……いわゆるのAVだ。  俊也は急いで拾って袋に戻したが、時既に遅く、知己にはそのパッケージの女優にはとことん見覚えがあった。後藤も菊池も門脇も家永も、なんなら将之だって知っている女優だ。 (……平賀朋……!)  微乳の堕天使と異名をもつ知己にそっくりのAV女優だった。 「……お前らー! こんなもん学校に持ってきやがって!」  知己が怒鳴ると 「エエー? 何、コレ。俺、初メテ見ター」  棒読みで俊也が言う。 「いやぁ、びっくりしたなぁ! 中身がこれとは知らなかったなぁ! こういうの『ねみみにみみず』っていうんだろ? 」  しかも大根演技で。  それを聞いて章が 「びっくりしたのは、こっちだよ。何、その地味に『み』が多い慣用句。一個多いだけで大惨事。それでよく最高得点なんて取れたね」  気持ち悪い想像してしまったようだ。俊也は『寝耳に水』と言いたかったらしい。 (本当に……)  と、心ならずも知己は章の意見に同意した。 (いや、それどころじゃない!) 「俊也、それを寄こせ」 「やだ! 俺(の物)だ!」  俊也は知己より高い身長を活かして、腕を掲げて知己から誕プレの袋を守り通した。
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