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「よほどいいものなんだな」
という知己に、章は
「ただのDVDだよ」
と答える。
(ああ、章は映画好きだからな。俊也が好きそうなのを探したのか)
知己が納得していると、俊也が
「先生も気が向いたら何かくれ。俺の誕プレは365日受け付けているからいつでも大丈夫」
と遠回りな催促をした。
(それは、もはや誕生日プレゼントと言わないのでは……?)
と思ったが、知己は
「気が向いたらな」
と適当に返事した。
「ものじゃなくてもいいぞ」
「?」
「先生の心とか、体とか……そういう類のでも」
章からもらったプレゼントの上に、なぜか猛烈な勢いで「の」の字を書き出した俊也に
(何か言ってる……)
と知己は呆れた。すると、隣から
「それは、絶対に気が向かないと思うな」
代わりに章が返事をした。
俊也が袋の上から加減もせずにひたすら「の」の字を書いたため、適当に封していたシールが剥がれ、そこからするんっと中身が飛び出した。
「あっ! ヴァカ俊!」
「なっ?!」
すとーんと理科室の床に落ちて、俊也は
「しまった!」
と慌てた。
中身は確かにDVDだった。
しかし、がっつり書かれている文字は「R18」。
パッケージの女性のきわどい下着姿に、上目遣いで蠱惑的な微笑みを浮かべている……いわゆるのAVだ。
俊也は急いで拾って袋に戻したが、時既に遅く、知己にはそのパッケージの女優にはとことん見覚えがあった。後藤も菊池も門脇も家永も、なんなら将之だって知っている女優だ。
(……平賀朋……!)
微乳の堕天使と異名をもつ知己にそっくりのAV女優だった。
「……お前らー! こんなもん学校に持ってきやがって!」
知己が怒鳴ると
「エエー? 何、コレ。俺、初メテ見ター」
棒読みで俊也が言う。
「いやぁ、びっくりしたなぁ! 中身がこれとは知らなかったなぁ! こういうの『ねみみにみみず』っていうんだろ? 」
しかも大根演技で。
それを聞いて章が
「びっくりしたのは、こっちだよ。何、その地味に『み』が多い慣用句。一個多いだけで大惨事。それでよく最高得点なんて取れたね」
気持ち悪い想像してしまったようだ。俊也は『寝耳に水』と言いたかったらしい。
(本当に……)
と、心ならずも知己は章の意見に同意した。
(いや、それどころじゃない!)
「俊也、それを寄こせ」
「やだ! 俺んだ!」
俊也は知己より高い身長を活かして、腕を掲げて知己から誕プレの袋を守り通した。
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