自由登校なのに 4

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『そんな気がする……ってことは、先生も経験がお有りで?』  どこか揶揄うような口調に 「うるさい。切るぞ」  と知己が言うと、『待って、切らないで』と章は慌てて続きを話した。 『あれから駅で敦ちゃんを探したけど居なくって。一本前の電車に乗れたか、それとも僕が駅に来るのが嫌でバスで帰ったのかな? とも思ったけど。なにせお隣さんだからね。帰って、すぐに敦ちゃんちに行ったんだよ。でも、居ないんだ。僕より早く帰れないって変じゃない?』 「どういうことだ?」 『ぶっちゃけ避けられている』 「居留守か?」 『それはない』 「なぜ?」 『梅木家の人たちは、お父さんもお母さんもお兄さんず(複数形)も僕のことをすごく信用してくれているから、ね。例え敦ちゃんが居留守使っても、僕が会いに行くと、もれなく敦ちゃんを差し出してくれる逆セコムシステムなんだ』  逆セコ〇? (安全の反対という意味か?) 「それは恐ろしいシステムだな。章はどんな方法で敦の家族を誑かしているんだ?」 『幼稚園からの付き合いだもん。信頼もハンパないよ。それと敦ちゃんがふわっふわで信用ないだけ……でしょ?』  お隣の吹山章君はしっかり者で安心と、敦以上の信頼があるらしい。  例え敦が「会いたくない」と言っても、「章君が会いに来ているのに、何を言っているんだ」「章君に間違いがあるわけない」と差し出される図式らしい。 『だから、本当に敦ちゃんは家に帰ってないんだ』 「それって……」  もしや、大事(おおごと)になっているのでは……? 『連絡は有ったらしいから心配いらないって。敦ちゃんは、知り合いのお兄さんちに泊るって。家に戻ったら僕に差し出されるからね。そうならないように必死だよ』 「そんな理由で外泊OK? ゆるゆるだな」 『もちろん、相手は身元もちゃんとした人なんだと思うよ。梅木家は付き合いや仕事で外泊なんてよくあることだから、敦ちゃんに関してもそう。割とその辺は自由だからね。僕もよく泊りに行ったり、敦ちゃんも泊りに来てたりするし』 (敦、自棄になって家出ではなさそうだ)  と、知己はほっと息を吐いた。 『だから敦ちゃん居なくって、誤解もとけないし告白もできない状況でっす。オーバー?』  章は俊也の言い方を真似した。 「お前、ふざけているだろ?」 『バレた?』  ひとしきり笑うと章は 『とりま、明日も僕は学校行くから。敦ちゃんのことはそれから一緒に考えよう。じゃあ、また明日ー』  どっちが教師か分からない言葉を残して、通話を終えた。
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