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4月はもう目の前 3
その日は異動の発表の日だった。
「将之……、お前、何かしただろ?」
明らかに不機嫌な知己が、帰宅するなり尋ねてきた。
(この浮かない表情は……。クロードさんとの別れを惜しんでいるのかな?
相変わらず曖昧な態度ですね)
苦々しく思うものの、知己の質問に
「いえ、僕は何も」
すかさず手のひらを前に出して否定する。
将之の「僕は」に違和感を覚え、知己は直感的に
「『僕は』……ってことは、もしかして、やったのは後藤君か?」
「後藤もしていません」
今度は「も」に違和感だ。
絶対にこの男がからんでいると、本能的に察した。
ただ、確証は持てない。
将之が「やった」と言うまでは、あくまでも疑いは疑いのまま。確定ではない。
だけど、この男が素直に「やりました」と言うとはとても思えない。
限りなく明度も彩度も低い将之に
「だって、三人一緒に八旗高校に異動っておかしいだろ?」
と言えば
「は? 三人?」
将之が本気で驚いていた。
(あれ?)
意外な態度に、知己ははじめて(俺の勘違いか?)と思った。
「俺と卿子さんとクロード、三人の異動。しかも同じ学校。ありえんだろ?」
「え? 何、それ?」
詰め寄る将之に
「俺と卿子さんは分かるんだ。今の居る東陽高校は二人とももう長いからそろそろ異動じゃないかーって話は出てた。だけど、まさか一年しかいなかったクロードまでって。変だろ? だから、お前が何か手を回したんじゃないかと思って、さ」
と知己が答える。
「な、なぜ僕が、あいつの喜びそうなことに加担すると?」
こころなしか、将之の声がうわずっているような気がするが
「そうだな。お前が、俺とクロードをあえて一緒にするはずないもんな」
と納得はする。
だけど、将之は「そんな。こんなはずでは……」となぜかブツブツと呟いていた。
(先輩からクロードを遠ざけようと異動させたんだけど、まさか先輩の異動先にねじ込んだ形になったとは……)
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