自由登校なのに 5

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「ちょっと二人とも、話をそらさないでくれる? 肝心なことを聞いていないんだけど」  章が不満げに口を尖らした。 「言っておくが、話を反らしたのはお前だぞ。章」 「あれ? そうだっけ?」 「敦が4歳の頃はダメな子だったとお前が暴露し始めた」 「それ、違うよ」 「違う?」 「4歳の頃じゃなく、4歳の頃。  僕はそれはそれはひたすら敦ちゃんを守って……じゃない、お守りしていたんだから」 「!」  敦のこめかみに血管がびしっと浮いた。  敦の泣き顔見るのが嫌だと言ってた章のことだ。  多分「守ってきた」の方が本音だろう。 (なんだか、俺。章の言語システムが分かってきた)  と知己は思った。  敦の前では、1ナノミリも好きオーラを出さないし出せない。それはもう、4歳の時から沁みついている。 「話を元に戻すけど……、敦ちゃんは昨日、誰んちお泊りして、皮、剥いてもらったの?」 「章の言うことはイマイチよく分からんが……俺はにしてもらった。それだけだ」 「……っ!」  今度は章が息をつめた。 「うぅっ。敦ちゃんがチェリーボーイで処女でヤングマンじゃなくなった……」 (17歳は若者(ヤングマン)だろうに……)  章はかなり混乱しているようだ。 「……もしかして俺は、ディスられているのだろうか?」  章の話がまったくみえずに敦が呟くと 「いや。そうじゃないと思うけど」  章はナチュラルに敵を作る体質なので、知己は自信なく答えた。 「とにかく! 俺は今日、悪徳教師に決闘を申し込むためにここにやってきた」 「決闘? なぜ、そうなる?」  時代錯誤も甚だしい。  驚いて声を上げる知己に 「男なら欲しいものは奪い取れと教えてもらった」  と敦はふんぞり返って言った。 「だから、誰から?」  ほぼ反射で知己が尋ねると 「ら……」  一瞬、敦が何かを口走りかけて、慌てて口を閉じた。 「ら?」 「ら、らぁ……、あ、悪徳教師には秘密だ……」  敦が強引に会話の着地を試みて、 「ら、らぁ? ニュータイプかな?」  章は思いつくままにコメントをした。 (なんか、怪しい……)  知己が考え込んで黙ると、章が 「それで? 敦ちゃんの奪い取りたいほど欲しいものって?」  と尋ねてきた。 「章だ」 「え?」 「章を賭けて、勝負だっ!」  一段高い位置にいるので、自然と知己達を見下ろしながら敦が既に勝ち誇って言うと 「んっっっ、きゃーーーーー!」  章は真っ赤になって歓声を上げた。
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