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「口封じ……? 口と口で……?」
「あれ? 先生、大丈夫?」
「あいつめ……、敦がちょっと可愛いからって」
何やらブツブツと呟いている。
(あ……、先生も敦ちゃんが可愛いって思ってたんだ)
と章が思っていると、突然知己は敦に掴みかかった。
「何だ、何だ!? 俺は口を割らないぞ! 絶対に名前を言うもんか」
驚く敦に
「ぶっちゃけ名前なんてどうでもいい! それよりも、昨日あったことをもっと詳しく話せ!」
と詰め寄った。
「……あ、るぇ~?」
敦がニヤリと美少女顔に似合わない漆黒の微笑を浮かべた。
「やだ、教えなーい」
「なぜ!?」
「それこそ何故、俺様が悪徳教師にライオさんとの秘密の一夜を教えなきゃならんのだ?」
どす黒い微笑みに、知己は「ちっ」と舌打ちをした。
「……いい。お前が喋らなくても。家に帰って、将之に聞けばいい話だ」
「「……!」」
章と敦が顔を見合わせた。
「……ちょっと確認するけど、将之さんって、そういうのすぐに喋ってくれる人?」
章が心配そうに聞く横で、敦は「将之さんではない。ライオさんだと言っているのに!」としつこく訂正を入れていた。
少し考えて知己は
「……いや。確かに、章の言う通りだ」
敦に口止めした以上、将之の方からは絶対に喋らない。きっと、適当なことを言って、のらりくらりと躱されるだけだ。
と、なると敦に喋ってもらうしか手はない。
敦がニヤリと勝ち誇った笑みで
「章をかけた女装勝負で悪徳教師が俺に勝ったら、秘密の一夜を明かしてやろう。しかもノンフィクション、脚色なしで」
と言った。
(ムカつく……!)
珍しく知己の闘志に火が付いた。
(勝負の方法は嫌だけど、絶対に勝ってやる。そして、洗いざらい喋ってもらう)
その後、知己は事務室に鼻息荒く
「卿子……いや、坪根さーん!」
と駆け込むのであった。
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