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知己が自分の無力さに打ちのめされている横で、卿子が
「クロード先生。これから戦うぞーって人にそれはちょっと、言う事が厳し過ぎやしませんか? 意気消沈ですよ」
と諫めた。
「以前は、もうちょっと優しい言い方されてたと思うけど、な」
「そうですか? 夏以降かな」
「夏以降?」
「知己に隙がなくなって、なんかつまらなくなった気がして」
「平野先生に隙が無い? それは、むしろいいことでは?」
「それでも頼られると悪い気はしないんですが」
「???」
不思議がる卿子に
(逆転の目がないと分かったら、それが態度に出ちゃってましたかね)
と、まだ悶々と考え込む知己をクロードは横目で見た。
(よく考えたら、将之なんか取り柄の塊じゃねえか。見てくれも良ければ、言動はあんなだけど実は頭すっげーいいし、何させても巧いし、謎のカリスマ性でやたらと人から慕われているし……、卿子さんが俺を相手にしてくれない訳だ)
今度は知己がチラリと卿子を見る。
「大丈夫ですよ! 平野先生にはこれといった印象に残らない、何のとりえもないかもですが、それを補って余りある美貌がありますから! 女装にはうってつけです!」
と慰めと言う名のトドメを刺した。
「その点、アピールタイムなしというのは有難いですね。純粋に女装での美しさを競うってことで」
「……ただ歩くだけじゃ面白くないから、歩きながら、もしくは止まっても短時間なら何かするのは有りだそうだ」
卿子のトドメからいまいち復活しきれていない知己が、ぼそぼそと付け足す。
だが、それもどちらかというと芸達者な敦に有利な話だ。
「取り柄がないので、3回もどんな衣装にchangeしますか? 迷いますね」
「ぅぅ……っ(取り柄ない……)」
「早着替えできそうなもので、何か人の目を惹くもの……」
「テーマ性があったら、なお良いと思います。
知己、私たちが知らない実はあなたの得意なことってないですか?」
料理をことごとく炭化させる自信だけはあるが、多分、それを言ってもクロードに「地球温暖化ーっ!」と怒られるだけだ。
「特技……」
少し考えていた時に、知己の歩き方指導でクロードが持ってきていた竹刀が目に入った。
「あ! 俺、高校の時に剣道部だった」
「そうでしたね。前任校体育祭での早着替え、あれは見事でした」
「取り柄があって良かったですね、平野先生」
地味に知己が傷ついていると知らずに、卿子はめった刺しに励まし続けていた。
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