如月十日のこと 3

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「和装……。いいかもしれませんね」  と、早着替えの腕前(スキル)だけを買われて決まった。  前回のシスター風の洋装から一転、和装へのチェンジも見どころになるだろう。 「じゃあ、これ」  クロードから竹刀を渡され 「ちょっと振ってみてください」  と言われたので、とりあえず高校の部活で習った剣道の型通りに振ってみる。 「Oh……」  明らかに落胆するクロードが 「知己、それでは観客は萌えません」  と、やはりダメ出しをする。 「え? も、萌え?」  聞き返した知己に 「票が欲しかったら、受けるものをやらないと」  クロードは携帯で画像を検索した。 「これ、しましょう」  見せた画像は、擬人化された日本刀が戦う舞台の映像だった。 「え? ちょ、待っ……、これぇ?」  前回のストールダンスでいっぱいいっぱいだったのに、この複雑な動きを覚えろと? 「この動き、So beautiful(美しい)……」 「本当、女の子がきゃーきゃー言ってますね」  動画を覗き込んで、卿子もうっとりとして言う。 「和装には、日本刀でしょ? この動きを完コピしましょう!」 「ひぃぃ!」 「一カ月もあるんですから、このくらいできます!」 「嫌だぁぁ!」  もはや知己は悲鳴しか出てこなかった。  こうして出来上がったのが、「クロード達の言うことに逆らいません」的なことを三度繰り返す、例のお約束三箇条である。  歩き方だけでなく、演武の特訓も始まった。  やってみて分かったことだが、大胆な動きが多いが、知己が知っている剣道の動きに近いものも多い。意外に、ダンスよりは覚えられた。  それが、一か月前の話だ。
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