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俊也の手が止まり、隣の知己をじっと見る。理科室入口付近で立ったままの敦、章も俊也の傍に座っている知己をじっと見つめた。
「最初は俺をけむに巻く作戦かと思っていたけど、そんなズルはしてないって言うし。だったら、ゲームをしたくてもできない理由ってのを考えたんだ。
『主催者』が居ないとゲームの『首謀者』任命ができない。だからゲームもできない。俺は(こっそりローラー作戦してたから)たまたまゲームあった日なかった日を記録してたんで、出席簿で欠席者を調べたんだ。そしたら、ゲームしなかった日と敦が休んでいる日がぴったり合ったんで、なーんとなくそうじゃないかな? と思ったんだ」
「へえ……」
と章だけがコメントをした。
集まる三人の視線に耐えかねて
「敦は割と休みがちだよな」
知己は、手を止めていた俊也に無造作にビーカーを渡した。すると、俊也は渋々受け取り、また棚に並べだした。
並べろと言われなくても、ごく自然に片付ける。
この二か月ほどで染みついた俊也と知己の関係に
(あの俊也が……?)
敦は、知己の言葉よりも俊也の行動の方が気になった。
(こんなやつに……?)
知己をギリっと睨む。
生憎と知己の方はこの二か月ほど、章や俊也に睨まれたり軽口叩かれるのに慣れてしまっていたので、メガネの美少年に睨まれたところで、さして気にならない。
「4月の最初の方、あんまり学校来てなかっただろ? そういえば、その頃もこのゲームしてなかったなと思い出した。
ついでと言ってはなんだけど、敦があまりにも休みがちで気になったんで、遡って1年生の時のデータも見たら出席日数ギリギリで単位認定されてた。それで、敦にとって『欠課』ではなく『出席』扱いって大事かもと思って、章に『無理して理科室に連れ戻さなくていい』って言ったつもりだった」
「ちゃんと伝わったよ。だから放課後に連れてきた」
章がいつもの三日月の目で敦を見る。
俊也ばかりか章まで「つーかー」の仲なのかと思うと、なんだか敦は居心地悪いやら、腹が立つやら。
「なーんとなく……俺が『主催者』だと?」
と話すのも嫌そうに確認した。
「ん……。まあ、本当になんとなくだったんだけど。今日のお前の出席とゲーム開始で、初めてしっかり結びついたくらいだな」
「え?! 今日?! はじめて?! 本当、巡り悪いよね! 先生ってば」
章の笑顔で辛辣な言葉の連発に、知己は張り付いた笑顔で応えた。
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