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長い髪を揺らしながら、敦がランウェイの先端にたどり着く。
そこで立ち止まると、これまでも数々のキュートなポージングを魅せてきた敦だ。自然と観客は期待の視線を向けた。
敦は顔の前で手の平を内側に向け、指先までピンと伸ばしたポーズを取った。
「あざとっ!」
舞台袖で思わず卿子が唸る。
だが、それだけで終わらない。
続けざまにその手を前に差し出して、敦は裏ピースをして魅せた。
「はきゅーんっ! めっかわー!(※)」
たまらず、前田が叫ぶ。
「ぎゃうポーズからのよどみなく流れる動きでのぎゃるピース! まるで大車輪からムーンソルトを決められた気分だわ!」
(前田はコスプレ鑑定だけではなく、体操の解説もできるんだなぁ)
もう傍観していようと心に決めた後藤は、密かにそう思った。
「いや、それだけじゃない」
前田が自力でパイプ椅子に座ってくれたので、ようやく解放された両腕を組みながら将之が付け足した。
(あれ? 中位さんまで何かの解説者みたいになってる?)
「前田君。つっしー君の口元をよく見ろ」
「え? あ……、ああ!」
敦は、小さくすぼめた唇を尖らせていた。
「なにげに、ちょっと前に流行ったアヒル口!」
「ついでに目には……」
「目?」
前田が、手を丸めて輪を作ってその中を覗き込んだ。
(サングラスの上からそんなことして、効果あるんか?)
と後藤が思っていると、効果があったらしい。
「あああああ! カラコン入れてる! なんてこと! 頭のてっぺんからつま先まで、徹底したギャルコスー!」
前田と将之の会話に、後藤は、もうどこからツッコんだらいいか分からずに途方に暮れ
(……中位さん、めちゃくちゃ目が良いんだなぁ)
とだけ思っていた。
(※)かわいいの類義語。
めっかわ:めちゃくちゃ可愛い。
これで私の「かわ」言語は、全て出し尽くしました。
【関連イラスト】「挿絵を上げてみました。」
https://estar.jp/novels/25306033/viewer?page=626
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