結果発表

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 舞台袖で本気で悔しがる卿子とクロードに (協力してくれた二人には申し訳なかった……)  知己は心の中で詫びた。  だけど、タスキに『賞品』と書かれている通り、これで章は敦のものだ。  踏ん切りつかないまま卒業して別々の進路を歩むより、ここでお互いの気持ちをはっきりさせられて良かったのかもしれない。  ……ただ、将之と敦のことは気になるが。 (仕方ない。あいつが白状するまで、更にお預けを食らわすか)  と知己は考えた。 (あいつのことだ。もって、後、一カ月。そのくらい我慢させれば、向こうから白状するだろう)  この一カ月間というもの、黙秘を主張する将之にムカつくので当然夜を断り続けていた。将之は 「それとこれとは話が別でしょ?」  と図々しい主張をしていた。  腹いせもあるが (敦とヤったかもしれないヤツとできるかよ!)  と、知己は頑なに拒否した。  悲し気にしている将之は、それでもあの空白の一日の話を決してしない。  もしかしたら、それも将之の策かもしれないと知己は思った。  ―――――知己をこの勝負に挑ませるための。 「ところで『ずっかわ』って何だ?」  俊也が聞き慣れない言葉に、首を傾げた。 「ずっ友(ずーっと友達)みたいな感じで、ーっといいの略じゃない?」  敦ではなく、章が答える。 「敦の造語か」 「もしくは『ずぇったい(絶対)に可愛い』とか?」 「分かりにくいな。そこは『ぜっかわ』でいいんじゃね?」 「敦ちゃん、興奮すると謎言語になるからね」 「そこ、ごちゃごちゃうるさいぞ!」  敦がステージ中央の二人に突っ込むと 「ちなみに先生が100、だけどな」  なぜか俊也が誇らしげに告げた。 「え……?」  知己や舞台袖の卿子達のみならず、会場がざわついた。 「ぬ、ぬわにぃ()っ?!」  時差で敦も驚く。 「一票差で先生の勝ちだったぞ」  と、証拠を見せようと俊也は改めてピンポン玉を納めている箱の上の布を取り去った。 (あ、ばか須々木! また俺の合図なしに進めやがって!)  またもや打ち合わせと違う俊也の行動に、音響係が出番を失っていた。  確かに、青い知己の箱にはきっちりかつ整然と玉が詰まっている。対して、敦の赤い箱の角にはピン球1つ分のスペースがぽっかりと開いていた。 「え……? え? え? えええええ?!」  まさかの結果に舞台袖の卿子とクロードは抱き合って喜んでいるし、司会の章は手を知己に向けて勝利者として紹介しているし、スポットライトも知己に当たっている。 「……」  狐耳付けた知己は微妙な表情で、注目集まる中、呆然としつつもなんとなく腕を上げてみた。  その途端ざわざわと落ち着かなかった会場が、わっと湧いた。  どこでしたらいいか分からなかった拍手がようやくするべき瞬間を迎え、盛大に沸き起こって勝者を祝っていた。 「はあああ?! 紛らわしんだよ、俊也!」  思わず俊也に怒鳴るが、俊也はキョトン顔で 「いや、俺は『なんで敦が笑ってんのかなー』って思ってた」  と未だによく分かっていない。  俊也を相手にするだけ無駄とふんだ敦は 「くそっ! たかが一票差で偉そうにすんなー!」  今度はなんとなく手を上げて歓声に応える知己に向かって喚いた。 (うわあ、それ敦ちゃんが言う?)  章は説得力ないなぁと思った。
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